講演者
- 本間 充(花王 マーケティング開発部門 デジタルマーケティングセンター デジタルトレード室長)
- 山本 雅通(パナソニック アプライアンス社 デジタルマーケティングイノベーションG グループマネージャー)
モデレーター
- 田中 里沙(宣伝会議)
トリプルメディアの「基本」はオウンドメディア
——パナソニック、花王のデジタル部門を率いていらっしゃるお2人が、社内でどんなお立場でいらっしゃるかをお聞かせいただけますか。
山本:パナソニックのデジタルマーケティングイノベーショングループは、社内の中でも初めての組織です。私は、コンシュマー商品を担当するマーケティング部門と共にデジタルマーケティングを推進するグループを担当しています。
当社のオウンドメディアの課題は、国ごとで異なるグローバル戦略やマーケティング活動を実施していたために、ブランドの統一感が全くないことでした。デザインは国ごとにばらばらで、スマホやタブレットに対応できておらず、グローバル戦略の主力商品のコンテンツが見にくいなどの問題がありました。
ペイドメディアやソーシャルメディアでの展開も、オウンドメディアがしっかりと作られていてこそということで、その基本をきちんと作り直すことを提言しました。具体的には、ITとオペレーションの統一です。商品情報サイトを作り、そのプラットフォームにCRMを入れて顧客を囲い込み、それができたら次はECサイトの制作へという順番で、3年間で実現する計画を立てました。
顧客に基づくサイト構造、スマホやタブレットへの対応、統一されたデザイン、リッチなコンテンツという4つの柱を決め、コンセプトビデオを作り、我々が目指すサイトイメージを各国に明確に伝えた結果、約1年で、70地域/国に向けた30言語での一局配信を可能にしました。
本間:Amazonや楽天などのECをベースにした、オウンドメディアのマーケティング構築に取り組んでいます。今日のオウンドメディアという話で言うと、実は流通パートナーさんが販売してくださる販売活動と、ECサイトにおいて私自身が販売する販売活動は、似て非なるものなんです。花王は一見BtoCカンパニーに見えているかもしれませんが、実態はBtoBtoCカンパニーです。なぜなら、花王は顧客名簿を一切持っていないから。商品供給に関しては制御していますが、店舗に商品が置かれるかどうか、どんな価格で売られているか、どんな顧客に接しているか、コントロール不可能で、しかも、どれくらい売れたかもリアルタイムに分からないというのがこれまでの状況でした。
他方、Amazonを筆頭とするECはプラットフォームから直接全てのデータが届くので、いつ、どのようなアカウントの人が買ったのかというデータは来ます。しかも、店頭と違って棚落ちもしません。Webサイトを使えば、顧客の履歴に応じてメッセージも変えられるそういう意味では、完全にデータドリブンマーケティングができていて、最近話題になっているマーケティングオートメーションができるのではないかと考えて取り組んでいます。それが、「ECをベースにしたオウンドメディアのマーケティング構築」という意味なんです。
顧客のニーズは、「私向けの製品を、私が欲しい時に、私が望む状態で購入したい」へと変化しています。データドリブンマーケティングが可能なECで、将来あるべきパーソナライズされたマーケティングをプログラム化することがミッションと考えています。