講演者
- 川勝 和美(ワコール総合企画室 広報・宣伝部WEB・CRM企画課)
FacebookやLINEの普及もあり、情報の選択権が企業から消費者へとシフトし、企業は消費者に情報を一方的に伝えるのではなく、共感しシェアしてもらうことが重要になっている。
ただ、ワコールが実施したアンケートでは、「親友同士でも下着の話題はしない」という回答が大多数を占めるなど、下着はリアルな口コミが発生しにくく、世の中で一般的に言われているセオリーが通用しない。そこで、同社は「下着の脳内シェアを高めたい」と考え、顧客との関係性を強化し、エンゲージメントを高めるWebサイトの構築に取り組んだ。
「下着は経験しないと評価をいただけないという意味で経験財であり、我々は商品ではなく経験を売る立場にあると考えています。経験者の感想を未経験者に伝えることが重要なため、信頼性を高めながら経験を育てる過程をプログラムしていきたいとも考えました」と川勝氏は話す。
まず顧客との接点を考察し、顧客が下着に接する行動を、4つのフェーズ「普段(無意識に着用)」「リサーチ」「購入」「活用」に分類した。顧客の生活の中で、実際は「普段」と「活用」が非常に大きな時間を占めているにもかかわらず、企業からの情報発信は「購入」と「リサーチ」のフェーズのみで行われており、顧客との関係を築けていなかったことが判明した。
また、もともと定番商品が少ない女性下着はリピート購入が難しい。そのため、顧客が次に下着を購入するときには、もう一度リサーチに戻るというフローの循環が見られる。そこで、受け手が探している情報を探しやすくすることが、発信側の取り組むべき最重要課題であると考えた。
こうした反省から、4つのフェーズに対応したWebコンテンツの立ち上げを進め、同時に第三者の視点で自社商品を紹介する「大人の工場見学」などの企画も行った。現在32万人が登録している会員向けコミュニティサイト「My Wacoal」では、よりパーソナルな情報提供のほか、リアルなイベントとして会員限定セミナーを昨年から開催するなど、Webサイトを軸に、顧客との長期的な関係構築を実現する施策を進めている。
「Webサイトとブランドは中心にお客様がいらっしゃってこそ回っていくもの」と川勝氏は話し、講演を結んだ。
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