誤解される理由①「概念」と「フォーマット」を混同している
「ネイティブ広告」が厳密に手法を限定するものでないとすれば、個々の事例について「これはネイティブ広告なのか否か」と議論するのは意味がなく、むしろ大事なのは、あらゆる広告の制作の現場で、「ネイティブ広告の考え方」を取り入れ、活かすことではないかと思います。
「ネイティブ広告」とは、あくまで受け手の側に立った、広告表現のあるべき姿の概念であり、ネイティブ広告の明確なフォーマットがあるわけではないのです。
例えば、私の著書『広告なのにシェアされるコンテンツマーケティング入門』の中では、LINEスタンプの作り方と共に、記事広告について次のような書き方のパターンを紹介しています。
しかし、ここで示したパターンもあくまで方法論の一つであって、ネイティブ広告が特定のフォーマットに限定されていない以上、作り方も様々で、正解はないはずです。
英語では「Native “Advertising(広告)”」と書くので、「Advertisement(個々の広告物)」とは抽象度が異なる、という意見を聞いたことがありますが、同じ指摘だと思います。まずはネイティブ広告という概念と、制作物を別々に論じた方が良さそうです。
誤解される理由② 記事の中身と、広告枠の話を混同している
次に大切なのが、“誰にとっての”ネイティブなのかという話です。ネイティブ広告は、配信する広告の中身のクオリティの話と、どのように配信するかという広告枠の、二つの側面があります。
中身について言えば、その広告がネイティブかどうかは、あくまでユーザーから見て、それが広告だけどコンテンツ並に楽しめるかどうかにかかっています。
幸いにもユーザーが見てくれるのは、面白いか、または役立つかであり、広告なのかコンテンツかを明確に分けて考えていません。それが広告だと分かっていても、面白ければ友人にシェアしてくれるので、ここにもネイティブ広告の可能性があります。
一方、ネイティブ広告を広告枠から考えると、TwitterやFacebookのタイムライン上に表示するなど、いかにコンテンツの体裁で広告を配信するかという話になります。しかしいくらコンテンツ風に見せかけていても、現状では中身が伴わないケースが多く、がっかりするユーザーも多いようです。
メディアなど事業者側が言う「ネイティブ広告」の多くは、このような事業者としての目線の広告枠の商品名であり、ユーザー目線でのコンテンツ自体の「ネイティブさ」とは、分けて考えないと混乱してしまいます。この混乱のために、「今、話題のネイティブ広告は『騙された気分になる』」といった調査結果もでています。
「約8割のユーザーが『騙された気分になる』と回答。ストレスを感じ、嫌悪感を持つユーザーも多い」とありますが、そもそもユーザーがストレスを感じる時点で“ネイティブ”ではないでしょう。先ほどの分類で言えば、メディア側が言うネイティブ広告は、中身(コンテンツ)をまだ伴っていないということにすぎません。
ただ、これは「卵が先か、鶏が先か」の議論で、ネイティブな広告枠が増えれば、ネイティブな中身の方が成果を出せるので、配給側とコンテンツ制作側をマッチングさせようとする話題は多くなっています。そのため、将来的には悲観する話ではないと思います。
このように全3回にわたって、「ネイティブ広告が誤解される理由」を考えていきたいと思います。お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
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