機械を頻繁にストップ
大野さんはGMやフォードに追いつこうと、徹底的に無駄を省くことにしました。そこで、前工程から後工程へ運搬する流れを逆にしたのです。前工程は作ったものを置いておき、後工程で使う側が必要な分だけ取りに行く。
現場を預かる「組長」は抵抗しました。人の配置や作業スピードをコントロールしていくことが彼らの裁量だと思っていたのに、それを取り上げられ、「作ったらすべて向こうに広げておいてください」となるわけですから。そこは大野さんがねばり強く調整しました。その結果、本当に在庫がなくなってしまいました。すると在庫を管理する人やパレット、フォークリフトなど様々なものがすべて不要になったのです。
一方で、工程の不具合などがどこにあるのかをすぐに分かるようにしました。そして即座に機械を止め、そこへ皆で駆けつけて、徹底的に直すことを繰り返しました。
これは、喜一郎さんのお父さんの豊田佐吉さんが発明した自動織機に源流があります。糸が切れるなどの異常が発生したら自動で機械が止まるようになっていました。大野さんはそこからアイデアをいただいたのです。不具合には組長が走っていって自らの判断で改善し、不良を後工程に送らない。これを人(にんべん)の付いた「自働(じどう)化」と名付けたのです。
こうした取り組みの成果が表れたことの一例にオイルショックがありました。需要が落ち込んだのち、戻ってきたタイミングでトヨタは比較的早く立ち直ったのです。ガソリンの値上がりで欧米でも小型車に乗り換えるようになり、トヨタ車が飛躍的に売れるようになりました。喜ばしいことなのですが、それが貿易摩擦を生むことにもなりました。