消費者から寄せられる「問い」がマーケティングの資源に
——最近の社会動向、消費者動向で気になることはなんでしょうか?
全員がということではないですが、特に若い世代の人たちが「自分がどうあるべきか」を考える力が弱くなってきているのではないかと思っています。
先ほど自分のこととして考えられるかという話をしましたが、それは決して自分の中でだけで完結させるということではありません。
しかしながら、狭い範囲の中で考えて、外のものを自分の中に入れられないような傾向が強くなっている気がしています。
一方で「相互助け合い」といった気持ち、社会に役立ちたい気持ちというのは強まっていると思います。
ただ、いい意味での欲というか、ギラギラした感じがなくなっているのはさみしい気がします。これは、私たちの世代の色眼鏡なのかもしれませんけどね。
——今後、注力していくことなどお聞かせください。
最近、自分たちの原点の重要性を再認識して、そこに立ち返りました。我々はQ&Aによっての互い助け合いをしているので、「経験者」が重要なのです。
一般の人たちの中にも、さまざまな経験をしている方がいます。しかし、特定の分野においては、やはり専門家の力というのは非常に大きく、それをもっと活用して、正しい情報をちゃんと出していきます。
5月に、朝日新聞社さんとインターネットを使った健康・医療情報を提供するコミュニケーションプラットフォーム事業を行うために提携したのもその一環です。これも、単に医者と患者だけでなく、医者同志、患者同士、ほかにも医療器具や、薬にかかわる方など、さまざまな面でQ&Aが役立つと思っています。
また、法律というのも専門家が求められる世界なので、弁護士さんに回答いただくというサービスも行っていきたいです。
15年間Q&Aを行ってきて見えてきたのは、ビジネスのヒント、マーケティングのヒントは問い合わせ、つまり「困りごと」にあるということ。最近、ビッグデータ解析といったことが注目を浴びていますが、我々の持つ、消費者の「問い合わせ」から見えてくることもあると思うので、そこも突き詰めていきたいですね。
<取材を終えて>
社員の自主性をいかにして引き出すかということと、同社のビジネスの根幹である「助け合いの気持ち」を社内でも発揮してもらうため、環境づくりに力を注いでいると感じた。「消費者の困りごとにビジネスチャンスがある」と話しているが、そうした困りごとが寄せられるのも「ここなら何とかしてくれる」という信頼があるから。そうした信頼が人材育成においても大きなベースになっているのだと実感した。
兼元 謙任
オウケイウェイヴ 代表取締役社長
愛知県名古屋市生まれ。愛知県立芸術大学卒業後、デザイナーを経て、1999年オーケーウェブ(現・オウケイウェイヴ)設立。2006年 名古屋証券取引所セントレックスに上場。主な著書に『ホームレスだった社長が伝えたい 働く意味』『1日1枚成功シート』