安心・安全のプロモーション
「食べても大丈夫か?」「使っても害はないか?」─商品の安全性を疑わせる報道がなされる度、買い物ひとつとってもつい考えこんでしまうようになった。食べたり、身体に触れたりするものであれば、防衛意識が高まるのは当然だろう。
消費者庁が2014年6月に発表した「消費者意識基本調査」では、商品やサービスを選ぶとき、「よく意識する(『常に意識する』+『よく意識する』)」割合が高いものとして、「価格」(93.0%)や「機能」(90.9%)に次いで、「安全性」(82.3%)が挙げた。
これは、定着しつつあるトレンドのようだ。野村総合研究所(NRI)が1997年から3年ごとに実施している「生活者1万人アンケート調査」の2012年版は、生活者は、「ただ安いものを消費するのではなく、品質を重視し、ライフスタイルへのこだわり、安全性に重きを置く傾向が強まっている」と報告している。
例えば、「多少値段が高くても、品質の良いものを買う」という人は、2000年の40.0%から、2012年は46.4%と年を追うごとに増えている。反対に「とにかく安くて経済的なものを買う」人は2000年の50.2%から、2012年は41.2%に減った。
こうした生活者の「安心・安全」を求める指向は「買うもの」だけでなく、今後、試供品などプロモーション上で商品と触れる際にも、ブランドに向けられる可能性は高い。
一つには、前述のNRIの1万人調査で指摘されている、生活者が「過剰な情報にさらされる疲労により、意思決定力が低下している」点。約70%の生活者が「商品情報が多すぎて困る」としている。こうした状況下で「安全」というのは分かりやすい判断基準となる。
一方で「正体が分からず、調べる手間をかけるくらいなら、使わない」というインサイトも伺える。実際、同調査では、「情報収集指向は飽和気味」としている。
安全を確かめるサインで分かりやすいのはメーカー名だろう。日本政策金融公庫の2013年調査で「PB商品を購入する際、「製造者名」を購入の判断材料とするかを尋ねたところ、「判断材料とする」とした回答は38.2% だった。
20代で25.6%、30代で33.4%、40代で37.7%、50代で39.9%、60代で44.5%と、年代が高くなるにつれ傾向が高まっている。
今後も、商品の安全性が脅かされるような危機は起こりうる。どんなに厳しく管理をしても限界があるだろう。
商品管理がディフェンスだとしたら、プロモーションで「安心・安全」を訴えることはオフェンス。自分たちのブランドを選ぶことが正しいアクションだと感じてもらうのもプロモーションのあり方かもしれない。
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