お客さん同士が「お店のあるべき姿」を議論して、提案をくれた
仲山:このディスカッションの前に私がお話しした「老舗度チェック」では、お二人とも7つの項目すべてに当てはまりました。この項目を眺めながらお話を伺いたいと思います。
畠中:SEO対策はしたことがないです。卵という商品自体、「たまご、タマゴ、卵、玉子」と表記が多様だったり、「医者のたまご」のような表現もあって、あまりSEOに向いてないというのもあって。「しゃべりたくなるネタ作りに忙しい」というのは、結局そうしないと自分も楽しくないからですよね。
いろんな企画を考えるのは売るためだけではなくて、「こういう企画をやったら、きっとお客様が喜んでくれるだろうな」と思うから。
仲山:畠中さんのメルマガには「完読者プレゼント」という企画がありました。一番下まで読むとキーワードがあって、そのキーワードを入れて返信すると「50番目に返信した人」とかにプレゼントが当たる。
畠中:七夕の時期だったら、「七夕の思い出は?」みたいなキーワードにしておくと、けっこうみなさんそれについて語ってくれるんですよ。その語ってくれた内容を次のメルマガのネタにするということをずっとやっていました。
仲山:内藤さんはこの項目をご覧になって、いかがでしょう?
内藤:前は「売るために一生懸命やろう」というスタンスだったんですけど、今は「お客様とどうやって良い関係をつくるか。お客様同士にいかにつながっていただくか」という部分に注力しているので、オフ会を良くやっています。
いまではお客様が「自主オフ会」を企画して、うちのスタッフが誘われる、ということもあります。最近なんて、オフ会にきてくれたお客様のグループから、「コミコミスタジオさんのあるべき姿についてホテルでひと晩議論してきました。その発表をさせてください」と言われて、いっぱい提案をいただきました(笑)。
仲山:オフ会は手間も時間もかかりますが、それをやる価値はどのあたりにあるとお考えですか?
内藤:自分たちが楽しいからだと思います。月間売上目標を立てて、どうやったら達成できるかばかり考えていたときは、売り上げはどんどん伸びるものの、だんだん売るためのテクニックを持っているスタッフに寄り掛かるような仕事の仕方になってしまい、仕事が楽しくなくなっていった。それで「無理やり売りつけるのではなく、お客様に感じるままに買ってもらえる場をつくろう」というスタンスにシフトしてからは、楽しくなってきています。
同業他店は競合ではなく仲間、マーケット全体の拡大を考える
仲山:この図で言うと、おふたりとも「老舗になった変人」ですね。
内藤:前は「目指せ一発屋」でした。今は「迷える老舗」かもしれないです(笑)。
畠中:やっぱり私は変人でありたいです。変わったこと、人がしないことをしたい。そもそも私の商材は、「うちの養鶏場で生まれた卵」というオリジナル商品です。
なので、競合を気にしたことはほとんどない。競合というよりも、同じ養鶏関係生産者として仲間意識が強いです。鳥インフルエンザが流行したときも、獣医の立場としてメルマガで正しい情報を流しました。
「流通している卵は安全だから、安心して食べてください」と言ったら、ものすごい反響があったんです。
仲山:安全だから「卵の庄」の卵を買ってね、ということではなく。
畠中:はい。お客様を奪い合うよりも、マーケットを広げたほうが良いんじゃないかと思っています。私がメルマガやサイトを通じて卵の良さを発信していって、「卵は1日1個まで、というのは誤解で、3個食べたって栄養学的に全然問題ありません」と広めることで、それまで1日1個しか食べなかった人が毎日2個食べるようになったら、マーケットが2倍に広がりますよね? だったら、奪い合いよりも、みんなで力を合わせてそっちの道を目指そうよと。だから、同業他店を競合だと思ったことはないです。老舗はそこを目指していくべきだと考えています。
仲山:消耗戦を抜け出して「老舗」になるためのヒントをいただきました。ありがとうございました!
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