検索という“ニーズの実績”を提案に落としこむには

中村耕史(クックパッド トレンド調査室 ディレクター)

ここでは、『販促会議』2014年8月号に掲載された連載「検索ワードから考えるクロスMD施策」を紹介します。

MD施策の立案に従来から利用されてきたデータの特徴

POSデータに代表される購買/購入データは、入手の容易さ、販売量の予測や強化すべきポイントが具体的な商品単位で分析できることから、最も利用されている。食卓日記調査や各種アンケートもよく利用されている。食卓日記調査は限られた地域のデータではあるものの、喫食の実績データとして季節ごとのメニュー提案には欠かせないものとなっている。アンケートは仮説に対して定量的な回答が得られるため、提案ストーリーの裏取りに利用されているものの、ストーリーありきのデータ利用や、新たな仮説が生まれにくいといった不満を耳にする。

ソーシャルなデータの特徴

流行の確認などに利用されているツイッターやブログ分析といったソーシャルメディアデータは、他者に見られる前提で生成されるデータであることから、仮説や本音を探るというよりは口コミの伝播や利用文脈の把握といった活用方法に向いている。

「たべみる」のような検索履歴データは、ブランドや容器サイズといったSKU単位での特性把握には向かないものの、商品カテゴリーやメニュー単位での“ニーズの実績”を定量的に分析できることが評価され導入する企業が増加している。

このように、施策立案・検証に利用されているそれぞれのデータには得手不得手があり、目的に応じた使い分けが必要となる。また、これらのデータを組み合わせて利用することで、新たな切り口の発見や、より精度の高い提案が行えると考えられる。

検索データから見える秋のイベントMD施策

季節指数が高い検索ワードランキングを見ると9月は「お月見」、10月は「ハロウィン」がそれぞれランクインしている。

「お月見」といえば団子が定番だが、それ以外のお月見の組み合わせ検索語を見ると、お弁当、キャラ弁が上位になっている。クックパッドではうさぎを描いたレシピや、卵で月を模したレシピなどが人気となっている。また、伝統的なお供え物食材の里芋も組み合わせ検索語の上位にランクインしている。

10月のイベントとして年々食卓にも定着している「ハロウィン」はお菓子やお弁当が組み合わせ検索語の上位となっている。メニューとしてはカレー、オムライス、グラタン、サラダ、ハンバーグといった洋風メニューが中心ではあるものの、寿司やおにぎりといた和風メニューも検索されており、幅広い売り場提案の余地があると見られる。

筆者が注目しているのは、経年で伸びを示しているソーセージ、オムライス、ハンバーグといった洋風メニュー・材料だ。ソーセージはミイラ、お化け、指、といったハロウィン向けの創作レシピが人気を博している。オムライスは色味を生かしながらキャラクターを描くのが人気であることから、定番のトマトケチャップに加え、海苔を併売品として忘れずに提案しておきたい。なお、ハンバーグの場合はキャラクターを描くためにスライスチーズが利用されることが多い。

■データを理解するうえでの用語解説

  • 季節指数:SI値の年間平均を100とした、集計期間における値。
  • 掲載ランキングデータのように季節感を把握する際に利用できる。

Case Study

検索データを起点とした、メニュー提案の実践例

↑店頭展開

イトーヨーカドーの食品館業態は、「たべみる」データを元に決定されているクックパッドのトップページに掲載されるレシピ※1と、クックパッドの「特売情報」※2、チラシ、店頭の連動を試験的に実施している。例えば「パエリア」がクックパッドのトップページで紹介された5月6日には、そのレシピに使われている材料をクックパッドの「特売情報」やチラシに掲載し、店舗も連動する形でメニュー提案・売り場作りを行った。クックパッドのトップページという、日本で一番閲覧されるであろうレシピを企画に取り込むことで、より効果的なメニュー提案が行えるのではないかという期待からだ。


※1 トップページに掲載されるレシピは「特売情報」利用企業には事前に共有されている。
※2 「特売情報」は、クックパッド上で近所のスーパーの特売情報を提供し、合わせてレシピ検索も可能とするサービス。2014年4月時点で登録利用者数200万人以上、本部・店舗からの直接投稿店舗数が4500店舗を超えている。

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中村耕史(クックパッド トレンド調査室 ディレクター)
大手市場調査/システム会社にて、リサーチ・コンサルティングサービスを提供。クックパッドに入社後、事業部門での社内アンケートシステムのリプレイスや施策の効果測定業務を経て、経営管理部にてデータ可視化・活用の推進を担当。

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