店舗を襲う脅威、そしてチャンス!
実店舗ならではの強みの一つとして、ユーザーが商品を一覧して見る事ができ、また、魅力的な商品に偶然出会えるかもしれないというワクワク感を醸成する効果が挙げられる。
ただ、技術の進化は止まらない。そういった店舗のアドバンテージを奪おうとする存在がある。今年3月、フェイスブックから巨額で買収されたVirtual Reality(以下VR)に特化したヘッドマウントディスプレイの「Oculus Rift」である。現在は、ゲームの利用用途として多くの注目を集めているが、それが確実にオンラインショッピングにつながっていくと考えられる。要は、VRを通して、目の前に広がるショッピングの空間であたかも店舗にいるような感覚でオンラインショッピングができるというものである。
そうなると、それでも残る実店舗のアドバンテージは、例えば近所の店舗で「すぐに目当てのものを入手できる」という事。ただし、これは国土の狭い国に限った事で、グローバルマーケットを見るとそもそも店舗が遠く離れている事が多く、そのアドバンテージも限定的だ。また、アマゾンは、既存の配送スピードの向上に加えて、無人航空機(航空ドローン)の開発も進めており、すぐに商品を手にできる分野にも投資を進めている。
VRであたかも店舗にいるような感覚で買い物をし、決済をすると航空ドローンがすぐに商品を届けてくれるといった具合である。
少し未来の話しになってしまったが、それだけ「想像を超えるスピードで技術が進化している!」ということなのだ。店舗企業とamazonのようなネット専業企業のガチンコ勝負である。
上記の技術は一つの例にすぎないが、店舗を持つ企業にとって、実店舗からの売り上げとウェブからの売り上げに差異があるわけではない。それなら活用できる技術があれば積極的に活用することが重要だ。繰り返しになるが、店舗を持つ企業は実店舗に加え、自社のE C サイトを含めたオンライン上での行動、購買履歴を含めた膨大な個人に関するデータを蓄積、分析、活用できるという最大の武器がある。これはネット専業企業には一朝一夕には手に入れる事のできない資産。
こうした広範囲な顧客接点とデータから個人の興味・嗜好性を分析し、個人に最適化された情報発信・サービス構築を行う事が可能だ。逆にユーザーの側から見ると、本当に自分の欲しい情報が、適切なタイミングで、適切な接触ポイントから入手できることになる。この流れは顧客も望むものではないだろうか。
本連載が店舗を持つ企業にとって情報革命の真っ只中をサバイブし、顧客に支持される革新的な方法を生み出すためのヒントになれば幸いである。
島田大介(エンターモーション 代表取締役社長)
1975年兵庫県生まれ。慶應義塾大学卒業後、日商岩井(現双日)に入社。その後、投資育成会社、bitvalleyで著名なネットエイジ(現ユナイテッド)を経て、米国のネットベンチャー企業の日本法人を含むベンチャー企業数社の取締役を歴任。2003年夏にエンターモーションを設立。現在、同社代表取締役社長。O2O、オムニチャネル戦略に連動したオウンドメディア構築ソリューションを提供し、導入店舗数は、大手外食企業、流通/小売企業を中心に1万1500店舗を超える。
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