特徴は、信号機をモチーフとしたロゴマークをはじめとした「アイコン的なビジュアル」を採用したこと。従来の啓発ポスターや公共広告に見られがちな恐怖訴求をやめ、共感を促すコミュニケーションを展開した。新聞6紙に各紙ごとに異なるデザインの15段広告を一斉に掲載したほか、ラジオでは時間帯ごとに異なる内容の啓発CMを放送した。歩道橋やタクシー、バス停などもメディアとして活用したほか、プロ野球の中日ドラゴンズやサッカーJリーグの名古屋グランパスともタイアップ。県や市、県警の協力も得ながら大きな動きに発展した。
朝日、中日、中部経済、日経、毎日、読売の6紙にそれぞれ異なるクリエイティブの広告を制作した
幹事社である中日新聞社の小出宣昭社長は壇上で、「文明には光が当たる半面、反対側には影ができる。交通事故という影の部分に我々ジャーナリズムが向き合い、広告を使って問題提起したことに意味がある」と強調した。キャンペーンを企画した電通中部支社アート・ディレクターの圡橋通仁氏は、「県民一人ひとりがスムーズに実際のアクションにつなげられるように、チームで制作を進めました」とコメントした。
ストーリー立てPR
このほか、「全広連鈴木三郎助大賞選考委員会特別賞」には、「2011~2013いのちを話そう。」キャンペーン(新潟日報社、新潟広告協会応募)と「~赤いけん!ウマいけん!くまもと~(くまモン ほっぺ失踪事件)」(熊本県広報課、福岡広告協会応募)がそれぞれ受賞した。
「いのちを話そう」は、新潟県の自殺率が全国でワースト10に入る高さであることから、県民読者とともにこの問題について真剣に考えていく狙いで企画したもの。2011年から13年まで4月~9月の半年にかけてキャンペーンを展開。新潟日報紙面で助産師や医師のほか、骨髄移植患者などの体験談を通じていのちの尊さを訴えた。
「赤いけん!ウマいけん!」は、熊本産のトマトやスイカ、イチゴなどの特産品の首都圏向け認知を上げるために実施したもの。共通点である「赤」と熊本のイメージを結び付けるため、熊本を代表する県の人気PRキャラクター「くまモン」を起用した。
「くまモンの赤いほっぺ紛失」をニュースとして伝え、その行方を全力で捜索するというストーリーを仕立て、その活動は連日メディアに取り上げられた。メディア露出は広告換算で12億円以上と試算された。
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