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「生涯付き合いたいと思える企業か?――お客様視点で考えるLTV」
全日本空輸 マーケティング室 ロイヤリティマーケティング部 部長 稲田剛さん
成熟市場においては新規獲得だけに目を向けるのではなく、既存顧客との関係をいかに良好かつ長期に保つかという視座が欠かせません。
全日本空輸(以下、ANA)では、2012年より顧客マーケティング部の名称を「ロイヤリティマーケティング部」と変更し、「ANAマイレージクラブ」会員にとって、生涯付き合いたいと思ってもらえる価値づくりのコミュニケーションを続けています。
日常生活での接点の多さが、ブランドに対する親近感醸成につながることから、 SNSも取り入れ、様々な企画で顧客と接点を作る取り組みを進めるANAの目指す顧客コミュニケーションの形とは?
――ロイヤリティマーケティング部はお客様とのより深い関係づくりを目指し「ANAマイレージクラブ」会員を対象にした各種プログラムを企画・実現しています。
当社がLTV(ライフ・タイム・バリュー)という考え方を強く意識し始めたのは2年前からです。
それまでも1年間のご利用頻度に応じて「ダイヤモンド」、「プラチナ」、「ブロンズ」の3つのステータスサービスを提供していました。しかし例えば、今年初めて「ダイヤモンド」のステータスになられたお客様と、5年連続で「ブロンズ」のステータスのお客様、はたしてどちらが重要なのだろうかという疑問がでてきました。
1年間の利用頻度を見ているだけでは、お客様の当社に対するロイヤリティに気づけない場面もあるのではないか。
そこで2013年からは生涯(ライフタイム)の概念を取り入れたサービス「ANA Million Miler Program」を開始しました。このプログラムでは「ANAマイレージクラブ」に入会いただいてからの総飛行距離(ライフタイムマイル)に応じて、オリジナルのネームタグのプレゼントはじめ、特別なサービスを提供させていただいています。
――ANAさんのような航空会社は特に、一人ひとりのお客様に向き合う「個客視点」が重要になってくるかと思いますが、お客様が何を考え、何を望むのか、「利用頻度」だけでは、なかなか見えてきません。特にお客様のロイヤリティという気持ちまで測るのは難しいですよね。
そうですね。利用頻度のような「状況」と「関係性」の二軸で語るべきですし、常にお客様の目線から活動を見直すことが必要だと思います。
例えば LTVはその顧客が生涯において企業にもたらす利益のことですが、これだけの理解だとそこには企業側の視点しかありません。しかしLTVという概念を考える際には、顧客からの視点が不可欠です。
「LTVをいかに高めるか」を考えることは、すなわち「お客様から見て、自分たちの企業が生涯付き合うべき価値を提供できているか」が問われているということ。
ただ身の回りの様々なブランドと同様で、お客様はどの航空会社を選ぶかでライフスタイルを表現している面もあると思います。
公共交通機関なので、より多くの方たちにとって利用しやすいサービスを提供することは大前提ですが、全てのお客様と生涯のお付き合いをすることはできないと思っています。