一つは、「熟語」が減ることです。文章では「減少する」「使用する」「放出する」と書くところも、話し言葉なら「減る」「使う」「出る(出す)」になると思います。どれも難しい言葉ではありませんが、熟語だと読み進める途中でいちいち引っかかる感じがある。それは目から入れた単語を脳へ受け渡すときに、瞬間的な「戸惑い」が生じるからです。「減る」という意味さえ伝わればいい所を「減少」と書いて、一瞬でも読み手のスルスルを遮断するのはもったいない!
それに、ベースの文章をなるべく仮名混じりにしておくと、動詞に置き換えられない人名や会社名など(漢字の固まりが多い)が浮き上がって見えてくるという効果も生まれます(固有名詞はゴツっと引っかかったほうが記憶に残りやすい)。同じ理由で、「〜出来ます」などは、「〜できます」と、常にひらがな表記にしたほうがベターです。些細なことのようですが、長い文章になるほど影響は大きく、漢字が多いと本文全体が黒く見えて、パッと見た瞬間に読むのがおっくうに感じます。
もう一つは、オノマトペ(擬音語・擬態語など)が馴染みやすいことです。肌触りがしっとりスベスベ、ふわっとした食感、パン生地がモチモチ、毛布がフカフカ、目覚めがすっきり… 数え上げたらキリがありませんが、読み手の感覚に直接訴えられるこれらの語彙は、音や動きを使えない印刷媒体にはとくに有効です。
たとえば、包丁のコピー。「この△△刃の切れ味は抜群です。熟れたトマトも見事に切れます」より、後半を「熟れたトマトもスパッと切れます」としたほうが前半と後半部分の文章にメリハリが効いて印象強くインプットできます。以前にも書いた通り、読み手を説得するには「知」と「情」の両面に訴える形が望ましく、オノマトペは「情」へのアプローチになります。説明的(知)な文章のあと、即座にオノマトペ(情)で念押しする。このコンビネーションは欠かせません。
もちろん、書き言葉にオノマトペが使えないというわけではありません(一説に「文語」に多く使われるとの説もある)が、とくに1つの文章に複数回出てくる場合などは、書き言葉に混ざっているオノマトペの部分が、とってつけたようなニュアンスに感じることが多いのです。
このように、長いボディコピーを最後までスムーズに読ませつつ、一読で内容をしっかりとインプットするために、「話し言葉調」はとても重宝するのですが、気をつけなくてはならない点もあります。