【前回のコラム】「フォーカスでヤフーを変える。」はこちら
ブランドはどうやればつくれるのか、という問いに関しては人によってさまざまな答えがあると思います。ロゴをデザインしたり、広告をつくったり、製品を開発したり、色々な軸がありますが、一言で言うなら、ブランドは「体験」からつくられる、といって良いのではないでしょうか。
たとえば、飲料。飲んでおいしいと感じれば、その飲みものが好きになる。味で覚えたいけれども、多くの人は味覚よりも視覚の方が鋭いので、その飲料が入っていたパッケージの名称やデザインと共に味を記憶します。
この場合、ブランド派生の起点となっているのは「おいしい」という体験であり、そのブランドを記憶するために必要なのが「名称(文字)」「デザイン」「味」なのです。
これが服やバッグだったら起点が「デザイン」になってきます。電化製品は、かつてブランドの起点が「性能」や「多機能」でしたが、現在はその2つが飽和しはじめてきており、起点が「デザイン」や「シンプルさ」に移り変わってきているように思えます。
何が「起点」となっていて、何が「記憶」されるのかを見定めることができていれば、ブランドをつくり上げていく上で間違うことは少なくなります。
そして、必ずその「起点」には人間の「感情」があることを忘れてはありません。飲料の場合、ブランドを醸成させる瞬間に生まれる感情は「おいしい」でしょうし、服やバッグの場合は「素敵」「かっこいい」であると思います。
人の感情が高まり、モチベーションが上がった瞬間に、人はブランドを記憶するのです(こう言うとなんだか小鳥の生まれた瞬間のすりこみのようですね)。
しかし、複雑なビジネス構造を伴う企業の場合は非常に難易度が上がります。
ヤフーは、トップページのニュースをはじめ、検索、ヤフオク、ショッピングなどなど、さまざまなビジネスが複合的に入り組んでひとつの企業になっています。
複合的な企業がブランドを考える場合によく陥ってしまうのが「統合的に考えて結果的に起点を見失ってしまう」というケースです。
そういった過ちに陥らないためにも、ヤフーは一つひとつのサービスごとの「感情」と、その「起点」を大切にしています。
本当に欲しかった掘り出し物が見つかって「うれしい」とか、毎日どんなことが起こっているかを「知りたい」とか、そういう一つひとつの感情を大切にする、その積み重ねがブランドにつながると考えているからです
たとえば、最近立ち上がったヤフーのモバイルであるY!mobile(ワイモバイル)は、「スマホは興味あるけど難しそう」という感情に応えるために、さまざまな施策をちりばめています。たとえば、エントリー用の1GBプランや、気軽に入りやすい料金設定などです。
ブランドというと、どうしてもデザインや広告に考えがよりがちですが、忘れてはいけないのは、人の「感情」が生まれたときに、ブランドも生まれるのだ、ということ。
毎日の小さな便利の積み重ねからブランドをつくっていけるよう、ヤフーはこれからもさまざまなサービスを世の中に提供していきます。
※連載『ヤフー、ただいま改装中。』は今回で終了となります。
ご愛読ありがとうございました。(編集部)