スマホの広告に対する消費者のとらえ方がどう変化するのかに注目
——最近の社会動向、消費者動向で気になることはなんでしょうか?
我々の業界動向としては、スマートフォンの位置付けの変化でしょうか。この1~2年で我々の生活の中にグッと入り込んできて、以前のように「スマホで新しいことをどんどん試してみたい」というところから、自分の生活の中で本当に役立つもの、ないと困るものという位置付けに次第にシフトしていっています。
実際、当社の売上の半分近くもモバイルが占めるようになっているので、スマホが今後どういう使い方をされて、我々のような広告事業者は消費者とどう広告の接点を持てばいいのかというのは、すごく気にしていますね。
また、モバイル端末は画面が小さいだけに、消費者の広告に対する向き合い方、例えば「すぐにサービスを使いたいのに広告がでてきて残念」と感じることに対して、どうコミュニケーションしていけばいいのかというのは大変気にしています。
——今後の貴社の展開、動向について教えてください。
我々がやらなければいけないこととしては両面から捉える必要があります。例えばクライアントサイドから見ると、広告ができて、プロモーションできるネットの面の面積を広げ、「いろいろなメディアをクライアントに提供できる」という役割を充実させること。さらに、その中で高いパフォーマンスを発揮する提案を行えるようにすることです。
また、メディアを開発するパブリッシャー側に対しては、プロモーションしたい広告主の広告在庫をいろいろなバリエーションでたくさん提供し、マネタイズの機会を増やすことです。
この両方を意識してビジネスを行うことが、我々の存在価値を高めていくことにつながります。さらに、当然ですがその先にいるエンドユーザーが、広告をどう捉えるのかということまで考え、消費者のメリットにつながる流れを作っていくことも重要です。
そう考えると、ウェブメディアにしっかりと広告費が落ちる仕組みというのは、もっと考えていなければいけないと思います。いまや、キュレーションメディアなどたくさんありますが、一次情報ソースになっているサイト、しっかりと取材してコンテンツを生み出しているところが、ちゃんと潤う仕組みを業界あげて作っていかないといけない。我々は、ちょうど広告主とメディアの間に入る立場なので、両方を持ち上げていくという役割をさらに果たしたいと考えています。
<取材を終えて>
とにかく「自分で考えて、自分なりの意見を持つ」ことの重要性について語っていた柳澤社長。今年から本格的に始めるという新卒採用についても、より早い段階から、同社のそうした考えを身に着けて仕事をこなしていくことが、より早い成長につながっていくという信念に基づいて進めていこうとしていた。
「リクルートのように、当社で仕事をした人材が、業界にとって大きな存在になるようにしたい」という言葉に、同社の人材育成への考えが集約されているように感じた。
柳澤 安慶
ファンコミュニケーションズ 代表取締役社長
1964年生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告会社、インターネットプロバイダーを経て、99年10月にファンコミュニケーションズを設立し、代表取締役社長に就任。05年11月ジャスダックに株式上場。14年3月、東証一部へ市場変更。