ここでは、『販促会議』2014年9月号に掲載された連載「販促NOW-モバイル編」の全文を転載します。
スマートフォンユーザー向けに販促する際、最も効果的なのが「位置」と「時刻」をピンポイントで狙うことだ。
「時刻」に関しては、メールやSNSで発信することで、ある程度、狙い撃ちすることが可能だ。しかし「位置」に関しては、いままでは発展途上といった感が強かった。
スマートフォンは、自分の位置を特定する際、GPSから衛星の電波をキャッチして測位を行う。GPSの電波は地上2万キロから降ってくる。最低でも3つのGPS衛星からの電波をつかまないと正しい位置にならないため、ビルが乱立して、3つ以上の衛星が見えないところだと、精度が落ちてしまうのだ。
見通しのいい屋外であればGPSは有効で、数十メートル単位で測位できるが、当然、屋内ではほとんど受信できない。
また、スマホの基地局からの距離でも現在地を測位できるが、こちらもざっくりとした現在地しかわからない。
デパートなどの商業施設などでは、「階ごとや店舗ごとにいるユーザーに向けて、ピンポイントで情報を配信するにはどうしたらいいのか」というのが課題となっていた。
その問題を克服しようと、NTTドコモでは「ショッぷらっと」というO2Oアプリにおいて、店舗に設置した端末から人間が聞くことが出来ない超音波を発射し、スマホに聞かせるという取り組みをしていた。しかし、その際にはユーザーが「アプリを起動しておく」という動作が必要となり、普及の足かせになっていたのだった。
そんななか、アップルは「iBeacon」という機能をiPhoneに対応し始めた。これは小さな端末からBluetoothという種類の電波を発射するというものだ。
iPhoneは常にBluetoothの電波をキャッチできるようになっており、ユーザーが意識しなくてもいいのが最大の特徴だ。iBeacomは微弱な消費電力なので、バッテリーの消耗を気にする必要もない。
iBeaconは半径数十メートル程度しか飛ばないようにできるので、商業施設の店舗ごとに設置して、それぞれ別の情報を配信する、といったことも可能だ。デパート内に複数設置すれば、ユーザーがどのルートで買い物をしたか、という動線も追うことができるという。
ユーザー基盤の多いiPhoneが対応したことで、iBeaconを使っての会員サービスなどを手がける会社が増えてきた。
例えば、紳士服大手の「AOKI」では、店内に来た顧客に対し、来店ポイントやクーポン情報・商品情報を配信するとともに、動線を収集し、分析するという。
2014年下半期から3店舗でテスト導入するが、将来的に全店舗での運用を目指すという。また、ショッぷらっともiBeaconに対応し始めた。
iBeaconはスマホユーザー、店舗共に負担が小さいので、一気に広がりを見せる可能性もありそうだ。
石川 温氏(いしかわ・つつむ)
ケータイ・スマートフォンジャーナリスト。1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。
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