【前回の記事「グランプリはこう狙え!——グランプリ受賞者特別座談会①」はこちら】
グランプリの狙い方
――グランプリを受賞したコピーは、どのように生まれたのですか。
日野原 僕は毎年、応募する際に明確な目標を決めていたんです。最初は協賛企業賞を獲る、次は一次通過作品から実際に企業の広告として作品を使ってもらう、そしてグランプリを獲る。目標に応じてやり方も変えていて、一次通過作品から実際に使ってもらうことを目標とした時は、変に外さず、出題企業が望んでいるものを汲んで、言葉を研ぎ澄ませることを強く意識していました。グランプリの場合は、いかに発想を飛ばせるか。一次通過や協賛企業賞を目標としていたコピーでは、グランプリは獲れていなかったと思います。
実際にその年は、グランプリを獲る気持ちで1000 本のコピーを書いていました。グランプリを受賞したのは、商品やサービスを使っている実体験が元になっていて、うまいこと言えたとか、いわゆるコピーっぽいコピーではなく、素直に出てきたというコピーでした。
高崎 私も、こねくり回したコピーも書きましたが、そういうのはたいてい些末なことしか言えていませんでした。グランプリのコピーは、実家に帰ったとき、自分が母に言っていることをストレートに文字にしたものです。結局その方がリアルだし、リズムもよかったんだと思います。あと、「てにをは」違いの似たコピーも応募しないようにしていました。
宣伝会議賞の面白さは、ここまで大規模で、審査員もすごいコピーライターばかりでありながら、誰でもグランプリを狙えるオープンさにあると思っています。だから、すごく初歩的ですが、何よりもまず、出すということも重要だと思います。私も面倒くさいなと思って出さなくなっていたら、そもそも獲れていなかった。応募するのに、勤めている会社や年齢の制限がないからこそ、色々な人にチャンスがあると思っています。
井上 僕もあまりこねくり回さずに、本質で勝負したのがあのコピーでした。自分は実際にこう思っているわけだから、それは間違いじゃないでしょうという。宣伝会議賞は失敗しても怒られるわけではないし、良い意味で責任感もない。気持ち的には前のめりでしたが、本当に楽しんでいましたね。アドバイスじゃないですが、グランプリを獲るコピーが何かは分からないんだけど、グランプリじゃないコピーは分かりますよね。「このコピーでグランプリはないな」っていうのは、自分で書いてて分かるので、それを自分で見つけて、理解していくことは大事だと思います。それから、宣伝会議賞は、グランプリ云々以上に、環境だったり人との新しい出会いだったり、色々なきっかけになります。
僕はいずれは身近なコピーを書ける仕事がしたいと考えています。コピーってポジティブなもので誰かをハッピーにするもの。言葉を使って、課題を解決するという意味では、コピーライティングということだけなく、もっと大きいところから課題解決をしていく存在にもなれます。そういう意味では、コピーってすごく可能性があると思います。