CMO経験者がトップに就任、アドビ新社長インタビュー——アドビ システムズ 代表取締役社長 佐分利 ユージン氏

——具体的に、ガバナンスの利きづらい日本の組織において、全社を挙げたデジタルマーケティングの実践、さらにマーケティングの経営ゴト化を支援していこうと考えているのか。

例えば「Adobe Marketing Cloud」には、様々なチャネルを介して個別に蓄積される、顧客に関するプロファイルデータを統合・管理できる「Master Marketing Profile」というサービスが組み込まれている。まずは顧客データを統合することにより企業としてコンプライアンスや個人情報の管理が可能になり、日本の縦割り組織の弊害の改善にも貢献すると考えている。さらには顧客データを組織として統合し、活用することでマーケティング効果の最大化を図ることができる。その実践を牽引することで、マーケターは社内で一番顧客を理解する役割となり、経営の中でも重要なポジションを担っていけるのではないかと考えている。

——日本では「マーケティング=マス広告」という認識が強く、デジタルマーケティングソリューションへの投資は、まだまだ積極的ではないところがあるのではないか。

日本の企業の経営層の人たちには、まだ多様化するメディア環境や、消費者の情報収集方法が変化していることの実感値が薄いからではないかと考えている。それは、我々のような企業のメッセージングの仕方にも不十分な点があったのではないかとも思う。いきなりデジタルテクノロジーの話から入るのではなく、どれだけ消費行動が変化しているのかという実態を伝えながら理解を得ていければと考えている。

私たちアドビも、デジタルマーケティングへのシフトを宣言し、現在ではマーケティング投資の7割以上をデジタルが占めるまでに至っている。以前は広告を打って、効果を検証するまでに半年、長ければ1年とかかっていたのが、デジタルマーケティングの世界では数時間、数分さらには数秒単位で効果を検証し、高速でPDCAを回して活動を改善することができるようになっている。デジタルへのシフトを自ら実践してきたアドビとして、お手伝いできることもあると思う。

次ページ 「アドビならではの強みは、どこにあるか」に続く

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