【前回のコラム】「「主体的に動くのか、指示待ちか。得られることの差は大きい」——オプト・石橋宜忠取締役COOに聞く」はこちら
このコラムでは、企業のトップに対して、人材育成について考えていることや実践していることを聞いていく。その中で、「マーケティング思考ができて、なおかつ実際に行動に移すことができる人材」を育成するにはどうすればいいのかを探っていきたい。
今回は、Webサイトの企画から制作・運用およびプロモーションまで一括してサポートする、メンバーズの代表取締役社長 剣持 忠氏に聞いた。
大事なのは価値観の共有。明確な理念を掲げ、共鳴してくれる人を募る
——貴社が社員に対して“求めている力”とは、どのようなものでしょうか?
求めている力とは若干異なりますが、まず「価値観を共有する」という点にとても注力しています。 当社では「貢献」「挑戦」「誠実」「仲間」と、共通の価値観を改めて明文化しています。そして、「こういう言葉に共鳴できる人に入社してほしい」としています。以前は「仕事ができれば、多少性格が合わなくても良い」という方向でやっていたのですが、やはり価値観が合っていないと仕事のベクトルも合わないと気付きました。
——かなり大きな変化ですが、何か転換のきっかけがあったのでしょうか?
2008年のリーマンショックがきっかけでした。あの時は当社の業績も悪くなり、離職率が25%近くになってしまいました。しかも、リーダークラスから先にやめてしまう。優秀な人を揃えてきたつもりだったのに、少し業績が悪くなると先に退職してしまうという状況を見て、これは改めなければと強く感じたのです。
従って現在は、仕事ができるということよりも「価値観が合うこと」を最優先にしています。それに加えて、社員には「メンバーズのことを自分の会社だと思って働いてくれる」ことを期待しています。メンバーズの共同株主のようなイメージで、なるべくオーナーシップマインドを持って仕事をしてもらいたいと思っています。
——オーナーシップマインドを育むために、行っていることはありますか?
退職時にメンバーズの株券に替えられるポイント制度を取り入れています。年2回通常ポイントを付与するほか、入社、結婚、子どもが生まれたなどの節目でもポイントがもらえるようになっています。また、人材育成という観点で言えば、全社員研修をやっています。昨年はメンバーズ創立20周年に向けて「全社員で経営理念を考え直す」というプロジェクトに取り組みました。これは今後20年間通用するようなミッションを全社員で考えようという試みです。今期はさらに「日常の仕事を通して、どのようにミッション実現をしていくのか」という研修を1年かけて実施してきます。