コピーを書くということ(3)—学んだ一言

企画はあるけど、世界観がない。

某携帯電話の防水性能を訴求する120秒ラジオCMを作る仕事でのこと。
“僕らは朝の洗顔から夜寝るまでに何度も水に触れる。
そんな暮らしを支える性能がこの携帯にはあるから、
1日を水の音だけで構成。母親の語りで聞かせたらどうか”
そんなアイデアを形にした原稿を打ち合わせで見せたところ、
こんなことを言われました。

「企画はあるけど、世界観がないね」

一人称で書いているこの母親は、どんな人で、どんな性格なのか。
普段どんなことを考えていて、
どういう口調にしたら音だけで感じ取ってもらえるのか。
そして、誰にどういった気持ちでこのラジオCMに触れて欲しいのか。
そこまで想像して書かれていないから魅力的な広告に見えない。
“水の音”に満足してしまった僕は、感情移入のできない文章を
受け手の顔も想像しないまま書いていたのです。
今では、コピーや企画を詰めるときに、
一度立ち止まらせてくれる言葉です。
そして、昨年、その大切さを身をもって実感しました。

一通の手紙。

昨年、僕はAD小畑茜さん(博報堂)と、
日本新聞協会「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」
の仕事をしました。

広告を見た人に「しあわせ」について考えてもらえれば、
と思い制作したそれは、予想以上にネットで話題となりました。
そんな中、一通の手紙が会社宛に届いたのです。
差出人は、新聞に掲載された広告を見た方からでした。
内容は割愛しますが、それは僕にとって、
はじめて人の心を動かせたことを実感できた瞬間でした。

受け取る側にどういう気持ちになって欲しいか。
コピーを書くということ、は届ける相手のことを考えることでもある。
そんなことを複数の仕事を通して学んだお話でした。
最後となる4回目は、TBWA\HAKUHODOや
仕事の仕方などについて書きたいと思います。


山﨑博司
TBWA\HAKUHODOコピーライター。2010年博報堂入社。2013年よりTBWA\HAKUHODO。主な仕事に、日本新聞協会「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」、日産デイズルークス、キヤノンマーケティングジャパンなど。2014年TCC最高新人賞、新聞クリエーティブコンテスト最優秀賞、毎日広告デザイン賞奨励賞、消費者のためになった広告コンクール銅賞など。コピーライター養成講座基礎コース修了生。

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