企画はあるけど、世界観がない。
某携帯電話の防水性能を訴求する120秒ラジオCMを作る仕事でのこと。
“僕らは朝の洗顔から夜寝るまでに何度も水に触れる。
そんな暮らしを支える性能がこの携帯にはあるから、
1日を水の音だけで構成。母親の語りで聞かせたらどうか”
そんなアイデアを形にした原稿を打ち合わせで見せたところ、
こんなことを言われました。
「企画はあるけど、世界観がないね」
一人称で書いているこの母親は、どんな人で、どんな性格なのか。
普段どんなことを考えていて、
どういう口調にしたら音だけで感じ取ってもらえるのか。
そして、誰にどういった気持ちでこのラジオCMに触れて欲しいのか。
そこまで想像して書かれていないから魅力的な広告に見えない。
“水の音”に満足してしまった僕は、感情移入のできない文章を
受け手の顔も想像しないまま書いていたのです。
今では、コピーや企画を詰めるときに、
一度立ち止まらせてくれる言葉です。
そして、昨年、その大切さを身をもって実感しました。
一通の手紙。
昨年、僕はAD小畑茜さん(博報堂)と、
日本新聞協会「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」
の仕事をしました。
広告を見た人に「しあわせ」について考えてもらえれば、
と思い制作したそれは、予想以上にネットで話題となりました。
そんな中、一通の手紙が会社宛に届いたのです。
差出人は、新聞に掲載された広告を見た方からでした。
内容は割愛しますが、それは僕にとって、
はじめて人の心を動かせたことを実感できた瞬間でした。
受け取る側にどういう気持ちになって欲しいか。
コピーを書くということ、は届ける相手のことを考えることでもある。
そんなことを複数の仕事を通して学んだお話でした。
最後となる4回目は、TBWA\HAKUHODOや
仕事の仕方などについて書きたいと思います。
山﨑博司
TBWA\HAKUHODOコピーライター。2010年博報堂入社。2013年よりTBWA\HAKUHODO。主な仕事に、日本新聞協会「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」、日産デイズルークス、キヤノンマーケティングジャパンなど。2014年TCC最高新人賞、新聞クリエーティブコンテスト最優秀賞、毎日広告デザイン賞奨励賞、消費者のためになった広告コンクール銅賞など。コピーライター養成講座基礎コース修了生。
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