ここでは、『販促会議』2014年10月号に掲載された連載「販促NOW-モバイル編」の全文を転載します。
スマホ業界のプレイヤーたちが次に向かっているのがクルマの分野だ。グーグルはホンダやヒュンダイ、アウディなどと組んで「Open Automotive Alliance(OAA)」を設立。Androidスマホをクルマのダッシュボードにあるモニターにつなぎ、グーグルマップや音楽再生をハンドルにあるボタンで操作できる仕組みを開発し、2014年中にも実用化しようとしている。OAAにはクルマメーカーだけでなく、カーナビメーカーも賛同している。
一方、アップルも「CarPlay」という機能を新たに載せようとしている。グーグル同様に、車内のモニターに接続することで、iPhoneの機能をクルマからコントロールできるというものだ。
アメリカでは「自動車事故の25%はスマホなどのデジタルガジェットを操作している間の不注意によって起きている」(グーグル開発担当者)といい、スマホの自動車対応が急務になっているとのことだ。
とはいえ、グーグルもアップルも単に「クルマのなかでスマホを安心して操作できる」という目的だけで積極的にクルマ分野に進出しているわけではないだろう。
スマホがカーナビに取って代われば、クルマに対して、さまざまな情報提供が可能となる。グーグルもアップルも自社で地図サービスを提供しているが、この地図に広告を載せればそれだけでも収益につなげることができる。車内でスマホの地図を使って検索してくれたら、クーポンを配布。さらに目的地に着いたら、スマホで買い物の決済をすれば、決済手数料が入るといったように、さまざまなビジネスモデルをスマホカーナビ向けに提供できる可能性があるのだ。
アメリカ企業が熱心にスマホカーナビに注力する中、日本のヤフーも本格的なカーナビアプリを提供してきた。
地図が充実しているのはもちろんのこと、無料でVICSによる渋滞情報が分かり、渋滞時には自動で回避ルートを案内してくれる。
また、駐車場の満車・空車情報、料金がリアルタイムで分かり(5〜10分間隔、さらに周辺の主なガソリンスタンドで、ガソリンがいくらで売られているかといった情報まで把握できるようになっている。
駐車場の空車情報やガソリンスタンドの料金情報は一部の場所に限られているがヤフーが提供しているだけあって、かゆいところに手が届く、細かな情報が提供されているのがうれしい。
実際に北海道で4日間、ドライブで使ってみたが、検索した場所もすぐに出てくるし、かなり正確にナビをしてくれた。北海道という土地柄、複雑なルートはなく、アプリにとってナビをするには容易な場所だと思うが、それでも道を曲がれば、すぐに進行方向に地図が回転して表示されるなど、使い勝手はかなりよかった。
今後、何十万円もする本格的なカーナビよりも、スマホカーナビアプリで満足してしまう層が確実に増えてくるものと思われる。
今後、自動車に乗る消費者をターゲットにしている業態であれば、こうした地図カーナビアプリに情報が載るか否か、というのが顧客を招く上で重要になってくるのかも知れない。
石川 温氏(いしかわ・つつむ)
ケータイ・スマートフォンジャーナリスト。1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。
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