著名人インタビューと商品コメント(その2)〜説得力のあるコメントの作り方編〜

インタビューでは、つい、商品についてのコメントをもらうことばかりに気が行きがちですが、一つ意識しておきたいのが、その人固有の「言い回しの癖」や、「〜だよね」とか「〜なの」といった「語尾」を正確に捉えておくことです(そのためにも録音は必須!)。しゃべり方というのは「本人らしさ」をとても印象づける要素で、著名人の場合、その特徴は意外と広く世間に浸透しているものです。とくに文章の場合、声やイントネーションを表せませんから、その人独特の言い回しや語尾が少しでもちがうと違和感だけが残ります。何よりコメントのリアリティが薄れますし、後で本人に原稿をチェックしてもらう時に「私はこんな言い方はしない!」とトラブルになる可能性もあります(けっこうこだわる人が多い!)。指摘されたときに素直に直せばすみそうなものですが、こじれてしまう場合もあって、そのフレーズを丸ごと消し取られる、あるいは最悪のケースで原稿の掲載自体に「ダメ!」を言われるケースもありますから気をつけてください。もちろん、一度そういうことがあると、次の仕事で絡むことも難しくなります(アナタ、過去に何をやらかしたの?って感じですね)。

じゃぁ、きっちりと実際のコメント通りに書き起こせばいいんだね?
いえいえ、言いたいことはその逆なのです。

人の会話というのは、主語が抜けたり、「て・に・を・は」が多少ちがっていても通じるものですが、文章に書く場合そうはいきません。言葉を補ったり、語順を入れ替えたりしてわかりやすく整理する必要があります。同じように、インタビュー時のコメントも、一定の範囲でアレンジしないと読む側に伝わりにくくなる場合があります。

そこで先述の「誘導尋問」を思い出してください。先ほどは、相手が商品に無頓着な場合の「秘策」として説明しましたが、実は通常のインタビューでも似たような手法を使うことがあります。
相手のコメントに対して「たとえば、言い換えるとこういうことですか?」とか、「こんな風におっしゃる方もいらっしゃいますが…」という具合に、随所に言い方を変えたフレーズを挟み込んでおきます。これは、後で原稿を起こす際に相手のコメントに足したり、言葉の一部を差し替えたりする時に使います。厳密には相手の口から出た言葉ではなくても、説明をわかりやすく補う形になっているぶんには、先方はたいがいOKしてくれます。逆に、「うまくまとめてくれてありがとう」などと感謝のメッセージをもらったりすることもあり、そんな時はホッとします。

もちろん、事実と違うことやインタビューに出てきてもいない事柄を加えたりしてはいけませんが(それは読者に対する裏切り行為!)、相手が実際に話した表現だけに頼ろうとすると、どうしても抽象的な言葉が多くなり、結果、平板なコメントにしかならないのです。

ただし、先方との関係がギクシャクすると、その辺りのやり取りがスムーズにいきません。コメント取りの仕事で、先方との良好な関係が大切なのはそのためです。著名人本人より、むしろ周辺のスタッフ(マネージャーや事務所社長など)がピリピリしている場合も多いのでインタビュー前や後の電話応対なども慎重に進めましょう。

次ページ「もう一つ、コメントの説得力を増すために大事なのが」に続く

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向田 裕(通販クリエイティブディレクター/コピーライター)
向田 裕(通販クリエイティブディレクター/コピーライター)

通販クリエイティブディレクター。コピーライター。1990年に総合通信販売会社カタログハウス入社。同社発行「通販生活」の商品ページの企画・商品コピーを担当。95年より読み物ページも兼務。主な企画に「筒井康隆さん、断筆をやめて通販生活に小説を書いてください」(読物記事&CM連動企画)。98年よりテレビコマーシャル制作を兼務 、「じゃぁ、どんな生活がいいの?」「ブッシュ大統領そっくりさんCM」「読者投稿によるCM大賞作」「通販生活の著名人シリーズ」などの企画に携わる。2003年『ピカイチ事典』リニューアルに伴いピカイチ商品開発チームに参加。05年より 「ネット編集部」編集長。2011年より広告企画室 ゼネラルマネージャー。2014年独立後、通販メディア各種制作、コンサルティングの分野で活動。セミナー講師。

向田 裕(通販クリエイティブディレクター/コピーライター)

通販クリエイティブディレクター。コピーライター。1990年に総合通信販売会社カタログハウス入社。同社発行「通販生活」の商品ページの企画・商品コピーを担当。95年より読み物ページも兼務。主な企画に「筒井康隆さん、断筆をやめて通販生活に小説を書いてください」(読物記事&CM連動企画)。98年よりテレビコマーシャル制作を兼務 、「じゃぁ、どんな生活がいいの?」「ブッシュ大統領そっくりさんCM」「読者投稿によるCM大賞作」「通販生活の著名人シリーズ」などの企画に携わる。2003年『ピカイチ事典』リニューアルに伴いピカイチ商品開発チームに参加。05年より 「ネット編集部」編集長。2011年より広告企画室 ゼネラルマネージャー。2014年独立後、通販メディア各種制作、コンサルティングの分野で活動。セミナー講師。

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