インタビューでは、つい、商品についてのコメントをもらうことばかりに気が行きがちですが、一つ意識しておきたいのが、その人固有の「言い回しの癖」や、「〜だよね」とか「〜なの」といった「語尾」を正確に捉えておくことです(そのためにも録音は必須!)。しゃべり方というのは「本人らしさ」をとても印象づける要素で、著名人の場合、その特徴は意外と広く世間に浸透しているものです。とくに文章の場合、声やイントネーションを表せませんから、その人独特の言い回しや語尾が少しでもちがうと違和感だけが残ります。何よりコメントのリアリティが薄れますし、後で本人に原稿をチェックしてもらう時に「私はこんな言い方はしない!」とトラブルになる可能性もあります(けっこうこだわる人が多い!)。指摘されたときに素直に直せばすみそうなものですが、こじれてしまう場合もあって、そのフレーズを丸ごと消し取られる、あるいは最悪のケースで原稿の掲載自体に「ダメ!」を言われるケースもありますから気をつけてください。もちろん、一度そういうことがあると、次の仕事で絡むことも難しくなります(アナタ、過去に何をやらかしたの?って感じですね)。
じゃぁ、きっちりと実際のコメント通りに書き起こせばいいんだね?
いえいえ、言いたいことはその逆なのです。
人の会話というのは、主語が抜けたり、「て・に・を・は」が多少ちがっていても通じるものですが、文章に書く場合そうはいきません。言葉を補ったり、語順を入れ替えたりしてわかりやすく整理する必要があります。同じように、インタビュー時のコメントも、一定の範囲でアレンジしないと読む側に伝わりにくくなる場合があります。
そこで先述の「誘導尋問」を思い出してください。先ほどは、相手が商品に無頓着な場合の「秘策」として説明しましたが、実は通常のインタビューでも似たような手法を使うことがあります。
相手のコメントに対して「たとえば、言い換えるとこういうことですか?」とか、「こんな風におっしゃる方もいらっしゃいますが…」という具合に、随所に言い方を変えたフレーズを挟み込んでおきます。これは、後で原稿を起こす際に相手のコメントに足したり、言葉の一部を差し替えたりする時に使います。厳密には相手の口から出た言葉ではなくても、説明をわかりやすく補う形になっているぶんには、先方はたいがいOKしてくれます。逆に、「うまくまとめてくれてありがとう」などと感謝のメッセージをもらったりすることもあり、そんな時はホッとします。
もちろん、事実と違うことやインタビューに出てきてもいない事柄を加えたりしてはいけませんが(それは読者に対する裏切り行為!)、相手が実際に話した表現だけに頼ろうとすると、どうしても抽象的な言葉が多くなり、結果、平板なコメントにしかならないのです。
ただし、先方との関係がギクシャクすると、その辺りのやり取りがスムーズにいきません。コメント取りの仕事で、先方との良好な関係が大切なのはそのためです。著名人本人より、むしろ周辺のスタッフ(マネージャーや事務所社長など)がピリピリしている場合も多いのでインタビュー前や後の電話応対なども慎重に進めましょう。