PR動画の制作にあたってはゴール設定や社内調整、著作権などのノウハウや知識が必要です。
今回は企業のPR動画を多数手がけてきた、モバーシャルの山下悟郎氏が解説します。
この記事は「動画活用・ディレクション講座」の開講に合わせ、掲載しています。
(出典:広報会議2014年11月号 巻頭特集「社員参加型PRの効果」より)
山下 悟郎(モバーシャル/MOVAAA 取締役 CMO)
「表現ありき」は失敗のもと
本稿では、実際に広報担当者が動画を制作する際に特に注意すべきポイントを解説したいと思います。実行にあたっては①社内調整 ②著作権と版権保有という2つのポイントがあり、詳しくは後述しますが、まずは基本となる企画段階で押さえておくべき点について考えていきます。
動画の企画制作を進める上では、カメラなどの機材や撮影のテクニック、演出、編集ソフトでの加工、技術的な面はもちろん大切ですが、最も重要なことは「何のためにこの動画を作るのか」という目的を社内できちんと設定し、共有するということです。
ありがちな失敗としては「あのCMっぽいトーン&マナーで」「ドラマ仕立てで、泣ける動画を」「グラフィックのカッコいい動画にしよう」といったように、表現方法ありきで企画を立ててしまうこと。特に今回、特集内で「社員が出演する企業動画」の成功例が多数取り上げられていますが、その手法のみを真似てみても同じような成果が得られるとは限りません。動画で成果をあげるためにも、まずは企画の基礎を押さえて進めていきましょう。
視聴ターゲットは社内? 社外?
企画から制作までの具体的なフローとしては、基本的なことではありますが図1のように5W1Hの視点で考えることをお勧めします。この中で最初に考えなければいけないのは「Why」、つまり先述の「動画制作の目的」です。「企業や商品ブランドの認知向上」「製品価値の伝達」「利用シーンの提案」など、達成したい目的をしっかり考えます。次に社内向け・社外向け、年齢・性別といった視聴対象を設定します(Who)。
以上を踏まえて「いつ」「どこで」視聴者に届けるかを考えます。特に社外向けであればYouTubeのような動画共有サービスなのか、オウンドメディアか、SNSか。社内向けであれば社内報やメールでの配信、DVD化してイベントなどで活用するといった「Where」の視点で、どの時期の、どんなタイミングで動画を見てもらうのかを考えます(When)。
スケジュール調整の観点からも、「いつ」「どこで」を事前に決めておくと、制作スケジュールを逆算し、社内調整や制作準備をスムーズに行うことができます。撮影時のトラブルや社内チェックの遅れ、公開間際の混乱やミスを大幅に軽減することが可能です。
そして最後に「What」「How」。動画でPRする内容を決め「ハウツーなのかブランディングなのか」、また「どんな表現方法を用いるのか」といった中身を考えていきます。予算やスケジュールと相談しながら、目的を達成するために実現可能な範囲で考えていきましょう。