1本のコピーが企画のフレームになる
福里:この3人はなぜか全員トヨタの仕事をしているという共通点もありまして、今日は実はトヨタ対決でもあるわけです(笑)。先ほどの「もっとよくしよう。」は、木村さんと小西さんが一緒に手掛けたお仕事ですね。
木村:トヨタの安全や技術のイメージを高めるというオリエンで、トヨタのDNAであるものづくりに対するスピリットを伝えたいと考えました。豊田章男社長は「もっといいクルマをつくろうよ」といつもおっしゃっていて、トヨタには「カイゼン」というキーワードもある。車の話と企業の話、その真ん中くらいにあって時代のキーワードになる言葉は作れないかな?と言ったら、小西くんが次の打ち合わせで「もっとよくしよう。」というコピーを書いてきてくれて、これだ!とその場にいた皆で意見が一致して決まりました。
小西:トヨタらしさって、ものすごく地道に一つ一つ積み上げて変えていくところで、それは世界に発信できる日本らしさにも通じる。それを、世の中に伝わるようにしたコピーです。フレーズは短く、見聞きした人の中にきっかけとして残るようなものを、と思っているので、そう考えるとこれしかなかった。
福里:やっぱりコピーって大事ですよね。「もっとよくしよう。」というキーワードが出ると、パッと先が見えてくる。
小西:福里さんのジョージア「明日があるさ」もそうでしょう。言葉自体がフレームになっている。あの言葉がなかったら、シリーズを続けていくうちに途中でブレてしまうかもしれない。
福里:ちょうど21世紀を目の前にしたタイミングで、90年代の「やすらぎ」路線から、「前向き」路線に変更したいというオリエンをもらって。前向きでない自分が前向きな企画を考えるのは難しい…と思ったんですが、周りを見ると、「プロジェクトX」を見て熱くなっている人たちがいたり、モーニング娘。の「LOVEマシーン」が流行っていて、確かにそういう空気はあるなと。前向きソングって何年かおきに大ヒットするじゃないですか。そこにヒントを得て、前向きな歌を使えば前向きなCMになるんじゃないかと、坂本九さんの「明日があるさ」を、世相を入れた替え歌にする提案をしました。