宇宙開発が「国」から「民間」へシフトチェンジ
細川:
このプロジェクトが始まる前から、もう何十時間も岡田さんとは語り合ってきたんですが、こうやって改めて対談するのはなんだか気恥ずかしいですね(笑)。
岡田:
シンガポールのあの場末のスナックでの出会いから、こんなに大きなプロジェクトが動き出すなんて、本当に人生ってわからないもんですね!
細川:
今日は、いまの宇宙がかかえてる問題と、これから僕らが宇宙に出て行く上で使える話、みたいなことを小さいことから大きなことまでざっくばらんにお話しできたらと思ってます。
まずは、宇宙開発の現状ってどこまでいっているんでしょうか?
岡田:
宇宙における人間の活動範囲って、次のようなレイヤーで成り立っているんですね。
高度0km 地球の表面
高度100kmの大気圏が終わるところ
高度400kmの国際宇宙ステーションが飛んでいるところ
高度800〜1000km低軌道 衛星がたくさん飛んでいるところ
高度2万km中軌道 GPS衛星が飛んでいるところ
高度3万6千km 静止衛星が飛んでいるところ
その次は38万kmの月
その次は6000万〜1億kmの火星
その先に小惑星(はやぶさが行った2億何千万kmみたいな)
それぞれの域でステップが進んでいます。具体的には、行けなかったところに行く=「探査」。探査の次は「実用化」。衛星として機能させたり、サンプルリターンをやったりするのがそれですね。その次は「人が利用」する、です。
これを、いままでは全部「国」がやってきた。それがここ最近、民間がやれるようになってきた。ものすごく大きなシフトチェンジが起こっています。
細川:
何をやるにも税金でまかなう必要がある「国」では、やれることに制限がありますよね?税金を使う立派な言い訳が通用する実験や研究にしかお金を使えない。
岡田:
そうですね。ところが民間はビジネスが目的だから自由度が違います。ビジネスだから「利用」を考えますよね。宇宙の利用の仕方がここにきて一気に広がったんです。
細川:
いま、どんな利用が注目されてますか?
岡田:
旅行はご存知の通り話題になってますよね。弾道飛行もあればISS(国際宇宙ステーション)への旅行を企画している会社もある。他には宇宙ホテルや宇宙花火なんてのもあります。衛星にキティちゃんが乗る時代がきたんですから!
細川:
いいかどうかは別として、片道切符の火星移住の一部始終をエンターテイメントショーとして全世界で放映するなんて計画もありますね。放映権ビジネス。
岡田:
そして、忘れちゃいけないのが広告ですね。細川さんたちと始めたポカリスエットのLUNAR DREAM CAPSULE PROJECTのような。宇宙を広告の「場」として利用するという考え方。
細川:
なんか今まで凍結していたものが、一気に動き出した感がありますね。
岡田:
はい。チャンスがきたんです。いまはまさに最初の当事者になろうという勇気を持った企業がいくつか出てきた段階。そのひとつが大塚製薬さんだった。