月の利用の仕方に詳細なルールがないからこそプロジェクトは模範的に
細川:
イーロン・マスク(米国の起業家、電気自動車会社テスラモーターズ CEO)もそうですけど、いま宇宙に飛び出していってる人たちの行動は、啓発になる。「そんなふうに宇宙を利用して良いんだ」と。
岡田:
まさに!僕らの動向を世界が注目しています。
風穴があいた。それが今。
細川:
なぜ今、あいたんでしょう?
岡田:
いままで国が自分たちのものとして囲い来んできた反動でしょうね。
2000年あたりに大学が缶サット(空き缶サイズの模擬人工衛星)を作った。できちゃった。なんだ衛星って簡単につくれるじゃん!というパーセプションチェンジが起きた。
ああいう動きがぐるっと10年たって、小さい衛星作るだけじゃなくてもっとすごいことできるんじゃないかというマインドセットが生まれてきた。
アメリカではプライベートのロケットローンチャーは3社くらいある。そういう時代になったんです。
細川:
そういう宇宙開発にいっさい規制はないんですか?
岡田:
宇宙条約が平和利用の原則をうたっていたり、法律で安全上のルールはあるが、例えば月の利用の仕方に関しては詳細なルールはありません。
もっとさかんになってくればルールができてくるでしょう。だから僕らはこのポカリのプロジェクトで「模範的」なことをやるべきなんです。正しい方向に宇宙が行くように道を作る、そのために本当に注意深くやってますもんね。
細川:
表明している目的とは違う「悪い利用目的」で打ち上げる業者とかいないんですか?
岡田:
宇宙業界には信頼醸成措置があるんです。
こういうロケットや衛星をいついつ打ち上げる、というのを事前に宇宙機関が広報を通してとか、学会やカンファレンスで発表する。可能な限りオープンに議論します。さらに疑義があれば事前の監査要求などの透明性を高める動きもあります。
細川:
紳士協定みたいな?
岡田:
はい。それをしてないプロジェクトは逆にあやしいわけで。あれはあやしいぞ、っていうのも誰もが知ってるわけです。公表できないミッションなんだな、と。実際、そういうものはどの国でもあったりします。
今回の我々のプロジェクトは、中身も手段もすべて公開している、透明性がある、テレビでも見せている。これ以上の信頼醸成措置はないでしょうね(笑)。
宇宙を民間が利用するときに大事なのは透明性。
国のかくれたアジェンダを持っている、安全保障上の利益がからんでいる、というような疑念を一切払いながら実行することが大事だと思います。