前回の対談記事「「宇宙談義」Vol.1~宇宙広告の可能性って?」はこちら
衛星打ち上げの金額は劇的に下がっている
ドリル 細川氏(左)と、ASTROSCALE社 CEO 岡田光信 氏(右)。
細川:
宇宙開発と広告の親和性についてお聞きしてきましたが、気になるのはそれにどれくらいの金額がかかるかということだと思います。
それについてはいかがですか?
岡田:
確かに価格の問題は非常に大きいと思います。
ここにきて打ち上げに必要な価格がグンと下がった。
何百億じゃなく、何十億じゃなく、何億になった。
打ち上げからデブリ除去完了まで数年でこれくらいの金額でいける計算です。
細川:
ふつうにスポンサードできる金額まで下がってきたんですね。
岡田:
ちなみにデブリ除去衛星は、いくつデブリを取ったかリアルにわかる。結果が数字でわかるんです。これもいい材料だと思いませんか?
細川:
しかもそれが世界初ですよね?それは価値がある、企業にとって。
いろいろ広がりそうですね。その衛星はどのくらいのデブリを回収できるんですか?
岡田:
計算上、2年間で150個極小デブリを捕まえられます。毎週1個か2個。センサーが捕まえた瞬間にリアルタイムで地上に教えてくれます。
その数は、つまりその高度にどのくらいの分布で極小デブリが飛んでいるかというデータになる。このデータは様々な国営宇宙機関も欲しがると確信しています。まだ人類が持っていないデータなので。つまり、これはものすごい国際貢献や人類の未来への貢献にもなるのです。
細川:
そもそも、そんな1mmにも満たないデブリはそんなに危険なんですか?
岡田:
デブリの数は、10cm以上で3万個。10cm〜1cmで60万個。1cm〜1mmで100万個。
そして1mm以下だと億を超えるといわれています。危険度ですが、スペースシャトルの窓はよく見るとヒビが入ってるんですが、あれは1mm以下のデブリが当たってああなってる。スペースシャトルはもともとデブリが少ないエリアを飛ぶようにしているにもかかわらずそんなことが起こるんです。つまり、小さくてもとても危険。
細川:
衛星が、そもそもデブリから自身を守る仕組みは無いのですか?
岡田:
あります。でも1cmのものが来てギリギリ防げる程度のシールドのようなものです。デブリがぶつかると宇宙空間でも高熱になって燃えて蒸発しますが限界がある。これ以上大きなデブリを防ごうとするとシールドが重くなって衛星自体を打ち上げられなくなってしまいます。
細川:
必ず出る話ですが、失敗したときのリスクは?
岡田:
たしかに失敗のリスクは有ります。飛んだのに軌道に乗らなかった。機能しなかった。その場合は自動的に大気圏に落ちて燃えつきる仕組みを用意します。でかいゴミにぶつかってしまったら・・・、それはそれで、やはり大きなデブリから至急獲りに行きましょうということになるんでしょうね(笑)。
細川:
結果、獲りきれないよ、デブリは!ってデータが出てしまうかもしれない。
そしたら、もはやデブリ除去はあきらめ、どんなにデブリにぶつかっても大丈夫なロケットを開発すべきだ、というように舵を切らざるを得なくなるかもしれない?
岡田:
そうですね!いずれにせよ、このミッションは、今後の宇宙開発に指針を与えることになるでしょうね。