「宇宙談義」Vol.3~プロジェクトを通じて気付いた広告のさらなる可能性

スペースデブリ除去のためのR&D、企画、サービス提供を行うASTROSCALE社CEO 岡田光信さんとの対談、第3回をお届けします。


第1回の対談記事「「宇宙談義」Vol.1~宇宙広告の可能性って?」はこちら
第2回の対談記事「「宇宙談義」Vol.2~宇宙ゴミの問題を広告で解決するには?」はこちら

ビジネスとして宇宙ゴミ除去の問題を広告の力で啓蒙

ドリル 細川氏(右)と、ASTROSCALE社 CEO 岡田光信 氏(左)。

細川:
話は宇宙ゴミの除去に戻りますが、国はお客様にならないんですか?国がお金払うからデブリを除去してくれって言わないんですか?

岡田:
宇宙のゴミの9割以上はアメリカ、ロシア、中国が出したものなんです。
彼らの言い分は、ぼくらは圧倒的に宇宙開発に貢献してきたでしょ。ここからのデブリ処理などは最終受益者=利益を受けてるひとがやるべきだ、というのが彼らの主張なんです。利用者=GPS使ってます、天気予報見てます、衛星放送見てます、つまり僕らのことですね。それを国ごとに集めてそれぞれの国ががデブリ除去の費用を払うべきだ、と。

細川:
なんか勝手じゃないですか?
俺たちが開発してやったんだ、ゴミは出るもんだろ、と開き直ってるみたい。

岡田:
彼らは、我々はデブリを監視しているよ。どこにあるか監視してちゃんとデータもあげてるよ。という、もうひとつの言い訳も主張してます。

細川:
エクアドルなんか衛星打ち上げて1ヶ月でデブリにぶつかっておじゃん、なわけじゃないですか。これから宇宙開発に出て行こうとしている国がかわいそうです。

岡田:
船が難破して沈んだ場合の「ナイロビ条約」ってご存知ですか?たとえば、日本国籍の船がパナマ沖で沈んだら(邪魔だから)、パナマがひきあげてよい。そして、その費用を日本に請求していいという条約なんですが、実効されるまでに35年もかかってます。請求できないと引き上げた自分たちだけ損をするから、ルールができあがるまでにものすごい時間がかかった。同じようなことが宇宙ゴミでも起きてる訳です。ルールが無いから、除去するだけ損だよね、とどの国も考えている。

細川:
京都議定書も参考になる?

岡田:
95年から、すでにこんなに経ってるのにまだアメリカは批准してない。
でも実効をまたずに、民間がビジネスとして参入しCO2の除去を始めてるでしょ。同じことです。ルールができるのなんか待ってないで、宇宙でも民間がいますぐに始めるべきなんですよ。

細川:
ロジスティックスが全部GPS衛星を使ってますね?
使えなくなったら世界が止まってしまう。宇宙ゴミは人類全員の責任で除去すべきなんですね。

岡田:
そうなんです。でもまだ人類は危機感ないですよね?そんなことより今日のことで精一杯なわけで……。

細川:
映画『ゼロ・グラビティ』を観ても、どこか人ごとというか、フィクションとしてとらえてて、同じことが自分に起こるなんて誰も思わないですもんね。
停電したときに始めて電気の大切さを気づくのと同じ。
なによりもまず、この「危機感」をリアルに世界中の人々に持ってもらう活動というか啓蒙が大事ですね。これはやっぱり、僕ら広告業界の人間の仕事だなあ!
それと同時に、誰よりも早く行動を起こそう!という勇気あるスポンサーや企業を探さなくちゃ。それも僕らの仕事ですね。
ほかに、デブリ除去ビジネス以外にいま考えているアイデアはありますか?
あ、言えないか(笑)。言ったら誰かにやられちゃうもんね。

岡田:
ですね、まず細川さんに相談します!(笑)

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細川 直哉(Drill チーフ・クリエーティブ・オフィサー)
細川 直哉(Drill チーフ・クリエーティブ・オフィサー)

1970年生まれ。早稲田大学大学院にて建築意匠を専攻。1995年、電通入社。

クリエーティブ局、OOH局、プロモーション事業局を兼務し、「消費者参加型」キャンペーンを数多く手がける。
2011年にドリルのエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターに就任。与えられた時間と予算の中で最も劇的にクライアントニーズを解決するというミッションを実行するために組織された少数精鋭のソリューション集団を率いている。

CLIO、ADFEST、Spikes Asiaでのグランプリをはじめ、Cannes Lion、ニューヨークADC GOLDなど数多くの国内外の広告賞を受賞。Cannes Lionほか数多くの海外広告賞の審査員を務める。

一級建築士でもあり、自ら建築デザイン、空間プロデュースも手がける。

細川 直哉(Drill チーフ・クリエーティブ・オフィサー)

1970年生まれ。早稲田大学大学院にて建築意匠を専攻。1995年、電通入社。

クリエーティブ局、OOH局、プロモーション事業局を兼務し、「消費者参加型」キャンペーンを数多く手がける。
2011年にドリルのエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターに就任。与えられた時間と予算の中で最も劇的にクライアントニーズを解決するというミッションを実行するために組織された少数精鋭のソリューション集団を率いている。

CLIO、ADFEST、Spikes Asiaでのグランプリをはじめ、Cannes Lion、ニューヨークADC GOLDなど数多くの国内外の広告賞を受賞。Cannes Lionほか数多くの海外広告賞の審査員を務める。

一級建築士でもあり、自ら建築デザイン、空間プロデュースも手がける。

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