デジタル以外のメディアもまだまだ効果を発揮する
——世の中の動きや消費者動向で、注視していることはありますか?
トラディショナルなものの地力の強さというのは注視しています。例えばフィーチャーフォン。これだけスマホシフトが進んでいるといわれる中でも、「まだ意外とフィーチャーフォンが売れている」と感じるシーンがあります。インターネットマーケティングの世界に浸かっていると、世界がスマホに一極集中していくように感じてしまいますが、本当は、使う人と使わない人とが二極化して、多面的な生活者のクラスタが形成されていくのだと思います。
健康食品のテレビCMで「詳しくは今日のチラシで!」という表現がいまだに成立していること等も同様に興味深いなと思って見ています。シニア世代で「一生デジタルには関わらない」と決めているような人たちが、これから10年20年は、それなりに大きなマーケットであり続けるのかもしれません。
これらの二極化していく生活者に対して、マーケティング施策としては両者の「使い分け」が重要になっていくと感じています。特に当社は食品・飲料メーカーがお客様なので、ターゲットが広く、従来のメディアもSNSなどのデジタルも、どちらもカバーしていかないといけない。デジタルマーケティングと、従来型のマーケティングの最適な配分はどこなのか、組み合わせるのか、出しわけるのか、などそのさじ加減を案件ごとに考えていきたいと思っています。
——バスケット分析のサービスや、この10月28日にサービスインした特売情報サイト「レシポ」など、どんどん新しいサービスをリリースしていますが、オムニチャネルやO2O領域における展望についてお聞かせください。
生活者向け特売情報サイトの「レシポ」は、今まで当社が取り組んできたことの集大成ともいえるサービスだと思っています。ユーザーは、掲載商品をコンビニ・GMS等の店舗で購入し、そのレシート画像を送ることでポイントを受け取るという仕組みです。メーカーは、例えば108円の商品なら「108円ポイント付与」するということもできます。つまり「ポイントで購入金額をすべて還元するサンプリング」ですね。これなら、どんな人に渡したのか効果測定もしっかりとできるし、ユーザーもお得感を実感することができます。まずはこの仕組みを一気に広げていくことがこの先のミッションですね。
<取材を終えて>
BtoBとBtoC、両方のサービスを制作から販売まで手掛けるという環境を大いに生かし、相互を行き来することで自然とさまざまな力がついていくようになっていた。また一つのスキルではなく、複数のスキルを組み合わせることで、それぞれの強みとなるという考えを、スタッフも理解して取り組もうとしていることが印象的だった。
麻生 要一
ニジボックス 代表取締役兼CEO
2006年、株式会社リクルート(現株式会社リクルート・ホールディングス)入社。社内新規事業コンテストにて準グランプリ獲得。2010年、リクルートグループの「全社イノベーション賞(ARINA)」受賞。2010年11月1日株式会社ニジボックス設立、執行役員就任。2013年4月1日 代表取締役社長 兼 CEO 就任。