【前回のコラム】「「複数のスキルを組み合わせて自分だけの強みを発見してほしい」——ニジボックス 麻生社長に聞く」はこちら
このコラムでは、企業のトップに対して、人材育成について考えていることや実践していることを聞いていく。その中で、「マーケティング思考ができて、なおかつ実際に行動に移すことができる人材」を育成するにはどうすればいいのかを探っていきたい。
今回は、デジタルを使った新しい働き方をプロデュースしている、アバナード 代表取締役社長 安間 裕氏に聞いた。
顧客へと正しい提案をするためにも、強い意志を持ってほしい
——リーダーに対して“求めている力”とは、どのようなものでしょうか?
リーダーに求めているのは、「一貫したブレない意思を持つ力」です。これは社員に求めているのと同時に、私個人もそうでなければならないと考えています。仕事においてスタートしてからゴールに到達するには、方法論やツールとはもちろん、何よりも「最後までやりぬく意思を持つこと」が大切です。そもそも意思を持たない限り、人はついてきません。その点からも強い意思を持つことはなの重要です。
そして、強い意思を持つだけでなく、その意思を表現することも同じくらい重要です。これはマーケティングにも通じるのかもしれませんが、わかりやすく納得しやすい言葉で自身の意思を繰り返し表現していくことで初めて、社員やお客様に意思を浸透させていくことができるのだと思います。
また、それと同時に「お客様があるべき姿を考え、そこに向けてナビゲートしていく力」も必要です。場合によってはお客様自身が気付いていないかもしれませんが、なぜそうなのかを相手に納得してもらいつつ、行動を促すことができるかどうか。
例えば、お客様に「マーケティングのデジタル化と言ってもいろいろあってどれを使ったら良いのかわからない」と相談されたとします。そこで表層的に「こんな事例があります」として、サービスをお勧めするだけでは意味がありません。お客様の相談の本質は、「マーケティングのデジタル化の目的はビジネスを伸ばすこと」であって「デジタル化」ではありません。だから、常に課題の本質とは何かを考えることが大切です。ただ、現場がどうなっているか、いわばディテールも見逃してはいけない。だから「木を見て、同時に森も見る。そして意思を決定する」という行動を常にとる必要があります。
——細部と全体をバランス良く意識しつつ意思決定につなげるということですね。
そうです。当社のスタッフには、リーダーであるかどうかにかかわらず、先ほど述べた“意思”を持って仕事をしてほしいと考えています。また、育成という意味で言えば、若い時にはできるだけ専門分野の造詣を深めてほしいとも思っています。例えば、あるプロジェクトにおいてエンジニア2人の言っていることが真っ向から違うとします。そこでどっちの案に決定するべきかという意思決定を求められた場合、両者の発言のディテールが理解できない限りはどちらが正しいのかわかりません。ものごとのディテールを理解して将来的に正しい決断を下すためにも、関係する分野の専門知識を若い時から身につけてほしいですね。