米国におけるダイレクトマーケティングの最新テクノロジー——DMA国際エコー賞現地レポート【後篇】

今年の出展作品から紐解くキーワード

今年のカンファレンス&エキシビジョンのキーワードをひと言で表すとすれば、ズバリ「リアルタイム」である。

たとえば、世界各国でグローバルにデータ分析や分析ツールを提供しているExperian社のブースでは、企業がさまざまなチャネルで取得したすべての情報やデータをひとつの単独システムに統合するとともに、その後、顧客がどのチャネルから企業にコンタクトをとった場合でもリアルタイムで「個」を特定して、紐付けするプラットフォームが展示されていた。

近年のチャネルの多様化により、多くの企業がコミュニケーションチャネルの管理に、それぞれ独立したプラットフォームを利用するようになったが、それらがひとつに統合されることで、企業はシングルカスタマービュー(顧客の全体像)を得ることができ、顧客の一連の行動パターンに基づいた最適なPDCAサイクルの構築が可能になる。

このような発想自体は特に目新しいものではないが、興味深かったのは、数多くの企業が、同様のソリューションを出展していたってこと。これは、アメリカにおいてはすでにプラットフォームの統合の実践が“当たり前”になりつつあることの証明といえるだろう。

イノベーションアワードも熱い

さらに、もう一歩踏み込んだソリューションを出展して注目を集めていたのが、DMAイノベーションアワード2014を受賞した企業のブースだった。

なかでも特にユニークだったのが、ADTHEORENT社の「RTLM(Real Time Learning Machine)」というソリューションだ。これはDSP(Demand-Side Platform)の“進化版”ともいうべきものだが、興味深いのはデータベースがその名の通り、リアルタイムでサードパーティのCVや購買履歴までを学習し、商品価格やクリエイティブまでを変更しながら表示させていくという点である。

具体的に言えば、

①ADTHEORENT社のデータベースがモバイルユーザーのアドリクエストを記録(1日に10億件以上)

②記録と同時に、それまでに蓄積した膨大な情報(他社の情報含む)をもとにそのユーザーにとって最適な商品(ブランド)およびクリエイティブを予測して表示

③表示した広告がそのユーザーにマッチしたかどうかを検証し、新たな知見として蓄積

というサイクルをリアルタイムで繰り返すことで、データベースそのものが自動的に精度を上げていくというもの。

個人的に注目したのは、ユーザーにとって最適な商品およびクリエイティブを予測するうえで、他社(=広告主以外)のCVや価格やクリエイティブ情報も掛け合わせているという点だ。現状のDSPにあるDMP(データマネジメントプラットフォーム)をさらに深い情報まで取り込んでいくことによって、商品価格まで最適化できるなんてワクワクする!

確かに考えてみたら、顧客はどの企業から購入するということを企業側ほど意識していない。顧客視点でのエンドデマンドを軸としたシステムは、企業と企業をもシームレスに繋ぐ可能性を秘めているように思えた。

次ページ 「今後のダイレクトマーケティングの展望」へ続く

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