【前回のコラム】「「育成ではなく、機会をとらえて自ら成長できるか」——ドゥ・ハウス 稲垣社長に聞く」はこちら
このコラムでは、企業のトップに対して、人材育成について考えていることや実践していることを聞いていく。その中で、「マーケティング思考ができて、なおかつ実際に行動に移すことができる人材」を育成するにはどうすればいいのかを探っていきたい。
今回は、昨年12月に生まれ変わったばかりのマーケティングリサーチ企業である、電通マクロミルインサイト 代表取締役社長 篠田徹也 氏に聞いた。
仕事だけでなく、1人の生活者として人生を楽しめる力
——貴社が社員に対して“求めている力”とは、どのようなものでしょうか?
電通マクロミルインサイト 代表取締役社長 篠田 徹也 氏
「変革や変化に対して前向きに受け止めて、主体性を持って自分から推進していける力」です。ダーウィンの進化論のように、「強いものではなくて、変化に対応できるものこそが勝つ」と考えています。当社は昨年から今年にかけて、とても大きな変化があったわけですが、この変化の背景として「世の中も大きく構造変化している」ことがあったと思います。
そういった世の中の変化に対しても、自ら率先して変わって行けるという変革力は、これからの企業と個人ともにまず必要な力だと感じています。
それと併せて、「人生を楽しむ力」も必要です。人生には人それぞれの楽しみ方があります。そして、私たちの仕事は、その「人それぞれ」を調査・分析し読み解いた結果を、クライアント企業にお渡しするというものです。いわば、生活者の方と企業との橋渡し役をしているのです。だからこそ、私たち自身が人生を楽しんでいないと、企業や生活者の役に立つことは難しい。自分たちの経験に基づいて、1人の生活者という視点から世の中を見極め、五感で体感して、そこに充足している点、不足している点やギャップを見極め、データの裏づけをもって伝えることが必要だと考えています。
——生活者としての目線があるからこそ、調査設計をより立体的にするなど、仕事に反映させられるということですね。
そうですね。また業界全体として“労働時間が長い”と思われがちなところもありますが、人生を楽しみ、生活者のとしての視点を得るためにも、「時間の使い方」「一人ひとりが自分の生活時間に向き合うこと」も大切だと考えています。その意味で本質的なダイバーシティに取り組んでいます。
私自身、プライベートで「地域と関わる」ことを掲げ、PTAの副会長をやっています。これは父親としてPTAを通じて小学校や生徒たちと向き合うことで、新しく見えてくるものがある、プライベートを充実させることが視野を広げることにつながる、ということに気づいたからです。どういうことがあったら世の中に役立つことができるのか。分析者ではなく、商品、サービスの創造者として、ヒントやきっかけは、机の上ではなく生活の場にこそあると考えています。