「創造のヒントやきっかけは、机の上ではなく、生活の場にある」——電通マクロミルインサイト 篠田社長に聞く

数字が語る力を知っているからこそ、数字を公開するだけで成長につながる

——「自分たちの仕事の領域は調査・分析」と限定せずに、それをベースにした提案にも領域を広げていきたいということですか?

そうですね。調査・分析は私たちの専門領域ですが、本来、広告会社が向き合ってきた顧客接点、顧客理解にこそ、私たちの存在意義はあるはず。向きあいを深め、ビジネスインテリジェンス領域、マーケティング戦略までサポートできるような状態をつくっていけるのが理想ではないでしょうか。

——大きく会社が変わったわけですが、先ほどの「求めている力」を伸ばすために会社として実施していることはありますか?

「変革力」をつけるという点については、多様なものの考え方、仕事の仕方を体感させるべく、新しい風を送り込むことに留意しています。例えば、定期的に外部の講師をお招きして様々な講演を行なっていますが、先日は大手自動車メーカーでエアバッグを開発された小林三郎さんをお招きして「イノベーションの本質」にまつわる講演を開催しました。

また、組織やマネジメントの構造も見直しを行いました。今まではどちらかというとドイツのマイスター制度的な、職人とその弟子といった個人指導が中心でした。もちろんそれには「じっくり個人と向き合い、深い理解によって成長できる」という良さがあります。ただ一方で、そのままでは社会の変化のスピードについていきにくい。そこで、この半年で事業部制を導入し、それに併せて分業制や協業制も取り入れています。

今までのやり方を変えることは、不安が伴いがちですが、さっそく成果が見え始めています。伸び悩んでいた売上げも昨年対比で110%超。収益性も大きく改善し、さまざまな人材投資もしやすくなりました。変革対応力がでてきているということが、数字に出てきているといえるでしょう。これからは社員がやりがいや誇りをさらに実感できる環境に進化させていきたいです。

また、変化による成果をより実感してもらう一環として、会社の業績を今まで以上に細かく公表するようにしました。当然、当社の社員は数字が語る力を人一倍知っていますから、細かく説明しなくても数字を共有すれば、それが意味するところを理解します。今後は理解だけでなく、次に求められる打ち手・施策を自ら考え・行動するようになると、好循環で会社がより良くなっていくと思っています。

次ページ 「一点集中ではなくて、いくつもの目標をこなす中でバランスを取っていく」へ続く

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[マーケティング研究室]
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時代の流れがますます速くなっている昨今、求められる人材においても、そうした流れに翻弄されることなく、しっかりと考えて行動できる「マーケティング思考」が、マーケティング部門のみならず、あらゆるビジネスパーソンに求められる時代なってきている。

このコラムでは、そうした「マーケティング思考&行動」ができる人材を育成するにはどうすればいいのか?企業のトップに、人材育成について考えていること、大切にしていること、実践していることなどを聞いていく。

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