クリエイティブに角をつくる
須田:Facebookは広告メディアでありながら、広告も出稿しているので広告主という立場でもある。その立場から思うのは、社内にいろんな意見が出てくるのを押さえるべきところを押さえて、本当に伝えなければいけないところを明確化するクライアント側のディシジョンメイクが重要になっているということ。先日から始まったFacebookのキャンペーン「あなたは誰かのともだち」に日本市場で機能するためのアドバイザーとして僕も入っているけれど、広告に携わったことのないエンジニアから「これとこれでABテストができないか」という意見がでることもある。ただ、本社のマーケティングのトップがナイキやリーバイスで広告をやってきた人で、クリエイティビティを殺さないように、「ここだけを直しましょう」という意思決定する。
小西:それはすごいね。何を伝えたいかが明確であれば、クリエイティブはそこに向けて高くジャンプするだけだもん。
須田:クリエイティブが高く飛べば飛ぶほど、プラスの意見よりもマイナスの意見の方が目立つことも多い。そこで、「クライアントっぷり」が問われる。いま行っているキャンペーンも批判もあるけれど、広告はノイズをつくるためにやっているんだからと冷静に見ると、それはあるクラスター内の意見だけで、全体の数字はすごくいい効果がでている。広告は無視されることが最低なわけで、ネガティブな反応に左右されて修正してしまうと、広告のマジックも消えてしまう。
小西:なので、僕らがやるべきことは、クリエイティブにちょっとした角をつけておいて、コロコロ転がるときに、触れた人に「何かここでひっかかるな」と思わせることだと思う。機能主義的に完璧が並んでいるなかで、「あっ」と思わせなければいけない。
須田:小西さんが手掛けた企画の中では、僕は「はなまるうどん」の「期限切れクーポン大復活祭」が大好き。期間中に他社のクーポンでも期限を切れたものを持ってきたら、一律で50円引くというアイデアは抜群に面白い。内容は割引なんだけど、「本当にどこの期限切れクーポンでも値下げしてくれるのだろうか」とか「マクドナルドのクーポンでうどんが安くなった」とか、みんなが話題にしている。それは、広告が日常をちょっと幸せにするきっかけをつくっている。
小西:この企画はFacebookやtwitterといったソーシャルメディアが普及した時代に何ができるかをクライアントと一緒に考えた企画で、割引の予算以外に広告費をほとんど使っていない。店舗にポスターを貼るだけで、お客さんが写真を撮って拡散してくれた。最近の仕事で大幅に角につけたのは、イオンの機能性下着「トップバリュ ピースフィット」のCM。改札を下着姿で通るという内容に批判はたくさん来たけれど、動画が300万回再生された。こういうクリエイティブを「いいじゃないか」って受け入れてくれるイオンを本当にすごいと思った。