【前回のコラム】「「創造のヒントやきっかけは、机の上ではなく、生活の場にある」——電通マクロミルインサイト 篠田社長に聞く」はこちら
このコラムでは、企業のトップに対して、人材育成について考えていることや実践していることを聞いていく。その中で、「マーケティング思考ができて、なおかつ実際に行動に移すことができる人材」を育成するにはどうすればいいのかを探っていきたい。
今回は、市場調査会社向けインターネット・リサーチのクラウドサービス「POST」や消費者パネル購買データサービス「Scoop」といった-サービスを提供するITエンジニアリング企業、ボーダーズの代表取締役 萩野 郁夫氏に聞いた。
リーダーの素養がある人は自然とリーダーになっていく
ボーダーズの代表取締役 萩野 郁夫氏
——貴社がリーダーに対して“求めている力”とは、どのようなものでしょうか?
最初に申しあげると、当社はリーダーを意識して育てたことがありません。従って「育てる」ことに関して話をするのはちょっと難しいですね。そもそも、今の時代は「リーダーになる」ということ自体がとても難しくなってきていると思います。私自身、リーダー育成のためのさまざまな施策を行ってきましたが、その経験を通じて、最終的には「リーダーはパーソナリティの一つ」と感じています。こう言うと話が終わってしまうんですが(笑)。つまりは、人それぞれにリーダーシップのスタイルがあって、画一的にリーダーを育てることはできないのではないかと感じています。
ただ、これだけ市場が成熟している中で、会社としては、社の命運をかけて大きいビジネスを行っていこうというよりは、リスクヘッジも兼ねて、小さいビジネスをいくつも回していく方向がベターだとは思っています。だから、5~10人規模の組織を率いるようなリーダーの必要性はより高まっていると言えます。
——「リーダーはパーソナリティである」という文脈で言えば、「こういったマインドを持つ人をリーダーにしている」というのはあるのでしょうか?
今や、上司が「今日からあなたがこのプロジェクトのリーダーですよ」と伝える、いわば“立場が人をつくる”形でリーダーになるというよりも、“自然とリーダーになっていく”という流れがきているように思います。当社でもまさにそうした人がいますが、彼を見ていると「会社のトップ、つまり私の姿をよく見ている」と感じます。私は、社長としてのマネジメントよりは、自ら現場も含めて走り回るタイプなのですが、彼は、そういう姿を見て「自分もそうした行動をしなければ」と自発的に思って行動しはじめたと言っています。
そうして、周囲の人にアドバイスしたり、雰囲気づくりをしたりといった行動がどんどんできるようになっていきました。すると、自然にリーダーの貫禄がついていく。私はそのタイミングを見計らって彼に事業を任せたのですが、メキメキと力を付けてどんどん成長していきました。
事業ありきで「このプロジェクトは誰がやりますか?」と、やる気のある人を募るという方法もあると思いますが、当社の場合は、そうした方法よりも、リーダー的な言動が見え始めてきた人に機会を与える方がうまくいっています。