スキルよりもマインドを。ハードワークの中で育てていく
——経営者のマインドをしっかり理解している上で、「そのためにはこういう行動が必要ではないか?」と自発的に行動できる人。そして、そういった人に対してどんどん仕事を渡して、成長にドライブをかけていく。そういうイメージでしょうか?
そうですね。「正しい理解と自発性」が大切というのは、リーダーの育成に限らず、仕事全般について言えることだと思います。言われたことをただこなすのではなく「これはおかしいんじゃないですか?」とか「こうした方がいいんじゃないですか?」と常に疑問を持ち、発言できること。そういった発言が自然にできるような社風づくりには気を配っています。そうした中で率先して働きかけができる人はリーダーの素養があるのだと思います。そういう人に新しい仕事を任せて、さらに成長してもらう。そうやってサイクルを回していければと思っています。
——施策としてリーダー育成を特別に行うというわけではなく、「仕事を与えること」が重要だと。
そうですね。良い意味で「仕事を丸投げ」しています。つまり、投げっぱなしではなく、ちゃんと進捗を見てあげたり、しっかり結果を巻き取ってあげたりします。そうすると私自身もかなり忙しくなってしまいますが、そうして「自分がやるしかない」というマインドを高めてあげることが、我々のようなベンチャーには特に大切だと思います。
そもそも我々が挑む新しい分野については過去の事例や教科書などありません。結局自分で予測して、学んで切り開いていくしかないのです。だから何事も「できないことはない」という意識を強く持って仕事に向かってほしいですね。
マーケティングはテレビCMから、精度の高い購買データ分析へ
——最近の社会動向や消費者動向で気になっているものはありますか?
「これまでテレビCMにかけていた予算がどこへ流れて行くのか」が気になります。やはり、閲覧者のログがきちんと取れるようなメディアに向かっていくのではと私は考えています。我々も先だって「Scoop」という購買データを取得・分析するサービスをリリースしましたが、最終的にはコミュニケーション施策によって「購買したかどうか?」が最終的に重要になると思っています。
例えば、「水やお茶などの重いものはネットでまとめ買いする人が増えている」と言いますが、まだまだほとんどの人が自販機やコンビニで買っています。リアル店舗における購買状況を知るというのは、さらに重要度が増してくると思っています。
——これから取り組んでいきたいと考えていることは?
消費者の購買状況を知ることの重要性が高まるという状況を踏まえた上で、これから当社が力を入れていきたいのは、分析のためのサンプル数を増やすことです。既に数万人規模のモニターを用いた分析サービスをお客様に提供していますが、これをさらに増やすことで、細かくセグメントし、より詳細な消費者の購買状況を把握することができるようになります。サンプル数を増やすためには大きな投資が必要ですが、それをインターネットの力を活用することで、何か調査したいときに、すぐに10万人ぐらいがレスポンスしてくれるような状態を早く作りたいと思っています。
<取材を終えて>
「リーダーは育てるものではなく、一定の環境下で自然とその素養が発揮される」という考え方が印象的。とはいえ、“出現を待つ”のではなく、素養が発見されやすい環境を意識してつくること、またそれが見えた人には積極的に機会を与えて、リーダーになってもらおうという取り組みを行うことが、結果的にリーダー育成につながっていると感じた。
萩野 郁夫
ボーダーズ 代表取締役
1977年 徳島県生まれ
2002年 九州芸術工科大学大学院(現九州大学)修了
2002年 株式会社セコム 入社
セコムを1年ほどで退社し、ネットベンチャーに飛びこむ。
同社で現在の中核事業である市場調査会社向けオンライン・マーケティング・リサーチのクラウドソリューションPOSTの原型となる事業を立ち上げる。
その後、2006年に退職し株式会社ボーダーズ設立。
ITとマーケティングのノウハウを融合させた技術を武器に、外資・国内大手がしのぎを削る市場で独自の地位を築きあげ、虎視眈々と世界進出拡大を狙う。
高度情報化とグローバル化の時代において、新しい社会経済、市場を創りだす原動力となる革新的なサービスをさらに生み出すべく、事業を拡大させている。
座右の銘:明日世界が滅びるとしても、今日りんごの木を植える