アジア諸国の経済成長と日本にとってのビジネスチャンス
また竹中氏は、安倍政権下で進められているアベノミクスの「三本の矢」と呼ばれる経済政策が、その2本目まではある程度の評価ができると話した。
まず、最初の矢である金融政策、デフレ対策では、日本銀行との合意の元インフレターゲットを設定。適切な物価指数を目指した姿勢の評価が昨年の株価上昇率であると、その実績を評価した。
第二の矢である財政政策に関しては、公共事業などで景気振興を狙う初期の目標については評価しながら、2020年までの財政再建については、消費増税による景気の後退や、進まない社会保障改革などもあり「全く予測できない」と話した。
一方で、「第一、第二の矢はお金を使う需要サイドの話で比較的効果がでやすいが、成長戦略である第三の矢は効果が出るまでの時間がかかる」と指摘。第一・二の矢と第三の矢は、同次元で比較できないと述べた。
2020年に向けて、この成長戦略を実現するための鉄則は2つしかなく、そのひとつとしては規制緩和と法人税減税や、電力など公共料金の負担を上げないことなどを提言した。
竹中氏は、この規制緩和を進めるために昨年の4月に「国家戦略特区」構想を提言し、今年の3月に東京や大阪など6つの特区が指定された。安倍政権はこの特区を活用し、日本経済の成長を阻む岩盤規制を突破しようと試みている。
こうした規制緩和を実現するきっかけとしても2020年のオリンピック・パラリンピックは大きなチャンスとなる。1964年に開催された前回の東京オリンピックでも、新幹線の開通などその後の日本の土台となるインフラが整備され、新たなビジネスが生まれた。
今、アジアには約5億人の中間所得層がおり、2020年には17.5億人に達すると見込まれている。この近隣諸国の住民がオリンピック・パラリンピックを契機に日本を訪問すれば、「そこで私たちに新しいビジネスのチャンス、きっかけがある」と話し、国民ひとりひとりがチャンスを意識していくことが重要だと指摘した。
オリンピックで作ったものをレガシーとする発想が必要
最後に竹中氏は、「2020年の大会をアテネ大会のようにするのか、ロンドン大会のようにするのかは真剣に考えなければならない」と話し、財政赤字を残したギリシャのアテネ大会と、「レガシー」という言葉をスローガンに空港や大会後の利用を意識したコンベンションセンターの整備などを進め、大会終了後に世界で最も多くの国際会議を開いたロンドンを例に挙げた。
当然ながら、日本もロンドンのようにオリンピック・パラリンピックの機会を活用すべきで、大会をきっかけに経済を強化していかなければならない。「オリンピック・パラリンピックで作ったものをレガシーとする。そういう発想で私たちは2020年を目指して努力していかなければなりません」と話して基調講演を締めた。