日本版CMOの理想像とは?
続いて、今回の研究会のメインテーマである「日本版CMOの理想像を考える」に沿い、戦略・テクノロジー、組織、そしてマーケティングコミュニケーションにおける各社の課題が発表された。参加者からは「カスタマージャーニー」の重要性は社内でも理解されつつあるが、日本の企業ではまだお客様との接点を統合的にマネジメントできる、組織体系にはなっていないのではないか、との課題の声があがった。
今回の参加者のうち、ネスレ日本とフィリップスはヨーロッパに本社のある外資系企業。ネスレ日本にはCMOというポジションが、またフィリップス日本法人の場合にも、そうしたポジションはないものの、ライティング事業のマーケティングを統括する久保氏を始め、各事業部のマーケティングのトップが集まり、協議を行う場がCMO的な機能を果たしていた。
一方で日本企業でも、ANAの吉田氏が属するマーケティング室も従来からあった宣伝部の機能とWEBを見ていた部門が統合して、新しく設立された部門。日本の企業も徐々にではあるが、あらゆる事業、あらゆるお客様接点を横串で見るような組織や機能ができつつある、との話がでてきた。
しかしながら、「すでにCMO機能があるグローバル企業においても、各事業部を横串で見て、収益責任を負っている各事業部門に対して、サジェスチョンを行うには、その内容に高い価値がないと、組織を変えても機能しないのではないか」や「CMO的な人はコーポレートのブランディングとプロダクトのマーケティングの両方を見ながら、バランスを持ったジャッジをすることが求められるが、そのバランスの判断は難しい」といった次なる課題も見えてきた。
特に議論の中では今後、日本の企業に事業横断的にマーケティングを統括する、CMO的な組織ができてきた場合にも「コーポレートのブランディングとプロダクトのマーケティングのバランスをどう取るか?」は大きな鍵となるのではないか、との話がでていた。
約2時間半にわたるディスカッションを終え、JAPAN CMO CLUB Founderの加藤氏は「日本版CMOというテーマについても、それぞれの企業や組織により、あるべき姿は異なるもの。『これが理想形だ』という結論を出すつもりはなく、互いの課題やその課題に対する取り組みについて情報交換することが、それぞれの会社でのマーケティング実践の「役に立てば」と話した。またディスカッションの中では、参加者同士でコラボレーションのアイデアも多数出てきた。
さらに参加企業からは「自社と異なる業、さらに外資企業と日本の企業でも、マーケティングの取り組み方が全く異なり、意見交換の中から多くのヒントが得られた」「他の企業でも、自分と同様に頑張ってマーケティングを推進しようとしている人がいることがわかり、刺激になった」「商談などの場で他社の人と会うと、なかなか今日、出てきたようなコラボレーションの話にはなりづらい。企業と企業ではなく、人と人として出会える空間は貴重」といった感想の声があがった。
加藤氏は「皆さんで集まって課題を共有することで、コラボレーションのアイデアも生まれてくるのだと実感できた。『JAPAN CMO CLUB』発でコラボレーションの企画が具体化したら嬉しい」と締めくくった。
JAPAN CMO CLUB
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