高城剛×田端信太郎「世界を俯瞰すれば見えてくる、広告・身体・メディアの次の姿って?」

クリエイターの高城剛氏は、1980年代からメディア・コンテンツ産業で活躍し、2008年からは海外に拠点を移して、世界を俯瞰する視点で創造産業全体に鋭い提言を発信し続けている。そんな高城氏に、LINEの田端信太郎氏が社会、メディア、人間について問いかけた。11月11日に電通ホールで行われたトークの模様を紹介する。

広告営業に未来はあるのか?

田端:僕は高校生の頃からの「高城フォロワー」で、今も高城さんのメルマガを欠かさずチェックしています。そんな憧れの方に、今日は「テレビ」の話からうかがおうと思ってきました。高城さん、今の日本の閉塞感ってテレビがダメだからなんでしょうか?

高城:僕は、テレビは日本そのものだと思う。テレビが日本の空気をつくっていて、日本の衰退とテレビ産業の衰退は完全にシンクロしている。僕はもう15年くらい持ってないです。

田端:では、会場の皆さんに聞いてみましょうか。最近面白いと思うテレビ局は?…なるほど、「見ない」か「見るとしたらNHK」なんですね。今、連続テレビ小説「マッサン」効果で、ニッカのウイスキーがめちゃくちゃ売れているみたいですね。

高城:それって、信じられないことだよね。ヨーロッパではハードリカーの広告をテレビや公共の場ですることは禁止されていますから。イギリスでいえばBBCみたいな放送局がウイスキーのドラマをすることに驚きます。世界的な風潮からは、10年後には日本でも、タバコ同様ハードリカーの広告はできなくなると思いますよ。

田端:でも、日本のテレビ局の中でNHKは面白いし、ネット対応もダントツに進んでいると僕も思います。で、NHKになくて民放にあるものは何か? それは「広告営業」です。デジタル投資でも何でも、民放は何か新しいことをしようとすると、広告営業が“抵抗勢力”になって「それで視聴率が下がったらどうするんだ!」と反対するからできないのかなと思ったんです。

高城 剛 氏

高城:広告営業って、つまり枠の話でしょ? でも、もう媒体や枠は崩壊しつつあるわけじゃない?アメリカでは40歳以下の60%はもうIPテレビです。テレビの前の人に個別に広告が打てるわけです。同じ時間にテレビの前に座って国民が同じ広告を見ているって、それ昭和のフレームですよ。これから日本もテレビのIP化が進んで、リアルタイムのビッティングが行われるようになると思います。

田端:人間がメディアプランの線を引かなくなるということですか?

高城:世界はそっちの方向に行っていますね。

田端 信太郎氏 LINE 上級執行役員

田端:僕は株が趣味なんですが、株の世界で起きたことは、広告ビジネスでもやがて起こると思っています。株式の世界ではトレーディングのシステム化が進んで、証券会社の人間が営業に行くことはめっきり減りました。広告営業マンもいなくなるんでしょうか。

高城:オリンピックみたいなビッグイベントにはやっぱり必要だから、少しは残るでしょう。でも、日常的に流れる番組は全部ロボット化すると思います。ただ多くのクライアントが欲しがるターゲットの枠は確実に高値で取引されるだろうから、広告会社にとっての問題は、その新しい時代の枠を持てるかどうかでしょうね。

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