——世界の動きを見ると、コミュニケーションビジネスにおけるPRやPRエージェンシーの役割が変化してきているように思うが。
PRは従来コーポレート・コミュニケーション活動において、重要な役割を果たしてきたが、最近ではプロダクトブランドのマーケティング活動においても、PRの手法や概念が活用されるようになっている。
以前のマーケティングコミュニケーションは電波媒体を使った広告キャンペーンが中心だったが、いつでもネットに接続できるスマートフォンの浸透、それに伴うソーシャルメディアの普及でペイドメディアのみならず、様々な顧客との接点を統合的に活用したコミュニケーションのアイデアが必要とされている。
特に情報過多な時代だけに、ブランドと消費者との接点が作りづらく、いかに「24時間365日つながり続けられるか」という点に企業が価値を見出す傾向にある。エデルマンでは、「Living Brand」という概念を提唱しているが、24時間常につながっていたいと思ってもらえるアイデアが必要とされている。
——こうした環境の中で、PRエージェンシーはどのような点にビジネスチャンスを感じているのか。
24時間常に消費者とつながり続けるためには、消費者のアクションにすぐに反応できること、さらに時事性を盛り込んだ日々の話題をつくるクリエイティブを作る力が必要とされる。前者に関してはもともと、PR会社はリスクマネジメントを得意としてきたので、広告会社よりも強みを発揮できると思う。24時間体制で消費者の反応をモニタリングし、万一リスクとなるようなことが発生すれば、社内にいるCSR、カスタマーセンター、インナーコミュニケーションの専門家が対応できる環境にある。
これまでPR会社は、コミュニケーション活動のリードエージェンシーである広告会社が企画したブランドのメッセージをペイドメディア以外の領域でも拡散するための補助的な役割に終始していたが、これからはPR会社がリードエージェンシーとなりうる環境が生まれていると思う。
また、後者の時事性を捉えたメッセージ発信という点もPR会社の得意領域で、例えばエデルマンでは「クリエイティブニュースルーム」を設置し、それぞれのブランドが伝えたいメッセージと世の中の話題が合致するクリエイティブアイデアを日々開発し、各国のソーシャルメディア浸透状況に合わせて、適切なツールを選びながら、発信している。こうしたサービスがクライアントに支持される背景には、広告会社のクリエイターが企画したビッグアイデアが重視されるペイドメディア中心の時代とは変わり、ビッグアイデアだけでなく、日々つながれる無数の小さなアイデアが必要とされているからだと言える。
「クリエイティブニュースルーム」はGEやフォルクスワーゲンなどが活用していて、エデルマンが展開している国で、それぞれ1社は活用しているクライアントがいる。