日本でもHDR(ハードディスクレコーダー)の普及により、「タイムシフト視聴」など、新しいテレビの視聴スタイルが生まれている。もともとテレビ視聴に際して、多様なサービスが存在していた米国では、そのスタイルの多様化の変化は激しい。米・ニールセンにてテレビ視聴率調査部門を統括する、エリック・ソロモン氏に米国におけるテレビ視聴の傾向、さらに視聴行動が断片化する中での、測定方法の最近動向について話を聞いた。
——米国のテレビ視聴スタイルの変化の特徴とは。
米国内で起きている視聴行動の変化の特徴を一言で表せば「Fragmentation(断片化)」だ。次々と新しいデバイス、コンテンツ提供サービスが登場し、視聴スタイルは多様化し、従来型のテレビの視聴時間は減少。オンラインでの視聴に移行している。
米国で特に目立っているのが、「SVOD」と呼ばれる定額制ビデオ・オン・デマンド サービスで「Netflix」「Hulu Plus」「Amazon Prime」の3つが特に有名だ。ニールセンでは今年から、これらSVODによる視聴も計測の対象にしているが、ニールセンのパネルのうち、約4割の世帯でSVODに登録しており(2014年9月現在)、その数値は2014年1月より6ポイント上昇している(グラフ1)。
【グラフ1】定額制ビデオ・オン・デマンドサービス(SVOD)の浸透率
米国ではケーブルテレビの契約をしないとテレビ視聴ができない世帯も多く、コンテンツに対して対価を支払うという習慣は定着していた。ケーブルテレビの契約料は月額で100ドル程度、一方のSVODは月額で8ドル程度なので、ケーブルテレビから移行した視聴者も多い。その点は、地上波のテレビを無料で視聴できる日本とは環境は異なる点はあると思う。
——SVODの浸透により、テレビ視聴の動向に変化は生まれているか。
SVODを利用している世帯は、利用していない世帯よりも、テレビの視聴時間が減少する傾向にある(グラフ2)
【グラフ2】日毎のテレビ視聴時間の割合-2014年9月22日~10月26日
——米国のテレビ局にとっては厳しい環境と思うが、そこでどのような対応をしているのか。
確かに若年層では総じて、テレビの視聴時間は減少している。ただ「断片化」は、これまでのテレビ視聴がデジタルに移行しているというだけとも言える。テレビ局がオンラインでの視聴に、対応したサービスを開発できるか。その施策によっては、これまでに接点を持てなかった視聴者とも新たに接触するチャンスともなりうる。
例えば、米国三大ネットワークの一つであるCBSでは、月額6ドルで利用できるアプリを提供している。オンエアと同時にアプリを経由し、スマホやタブレットでも番組を視聴できるほか、アーカイブから過去に放送された番組を視聴することもできる。
その他、視聴者との新たな接触の機会として、ネット接続型の「スマートテレビ」も米国では利用者が伸びている。スマートテレビの所有率は21%で、その内訳として、13%がアクティベートされている状態、8%はアクティベートされていない状態である。アクティベートされたスマートテレビの所有率(13%)は、昨年比で78%の大幅な伸びを記録している。続いて昨年比の伸び率が高かったのが、タブレットで伸び率が59%、浸透率は46%となっている。番組コンテンツを流すことができる受像機が増えることは、テレビ局にとっての可能性を広げている(グラフ3)。