多様化するデバイス・サービス——米国で進む、テレビ視聴“断片化”の現状

——SVODやアプリには、広告は入るのか。

上で挙げた3つのSVODでは広告は入らないが、CBSのアプリでは広告が挿入される番組はライブでの視聴に限定されるものの、配信される。確かに通常のテレビ放送に比べれば、オンラインでの配信サービスは視聴者が広告に接する機会は減少する。加えて、オンラインでの配信サービスが始まった当初、「CMになったら視聴者はブラウザを閉じてしまうのでは?」という懸念が抱かれていた。しかし、実際には通常の放送に比べ、オンライン放送では、視聴者がその番組を検索して視聴しているケースが多いので、広告も含めて能動的に視聴される傾向が強く、放送局にとってのオポチュニティの一つになっている。

——テレビ視聴だけでも「断片化」しているし、さらに広く消費者の情報収集行動を生み手も、「断片化」の進行は著しい。この環境下で、企業はどう消費者のカスタマージャーニーをどう描き、またメディアに対する投資効果を測定すればいいのか。

ニールセンでは、メディア投資の効果を測る指標として、Reach(到達率)、Resonance(エンゲージメントに与えた影響)、Reaction(購買に与えた影響)の3点を挙げ、「3R」と呼んでいる。冒頭で提示したテレビ視聴に関するデータは、Reachに関するものだが、エンゲージメント醸成に与えた効果、購買に与えた効果も測定し、提供している。

例えばReaction(購買に与えた影響)では、大手スーパーマーケットのポイントカードのデータベースを基に、主に日用消費財の購買行動と広告接触の相関を、また服飾や旅行などの高額商品については、クレジットカード会社の購買に関するデータベースを基に、広告が購買に与えた影響を分析している。

——広告の購買に与える影響、Reactionの部分まで把握するには、シングルソースパネルが最も有用なのか。

どれほどパネルの数を増やしても、あらゆる購買行動に関しての分析に耐えうるだけの粒度のパネルを作るのは難しい。シングルソースパネルは重要なアプローチの一つではあるが、複数のデータをフュージョンさせることが重要だ。

——米・ニールセンでは外部の企業とデータ提供に関し、パートナー契約を結んでいる。

例えば、Adobeともパートナー契約をしている。これも互いが持つデータをフュージョンさせることで、互いのクライアントにとってよりよいサービスを提供することにつながっている。
具体的にはAdobeは、「Adobe Primetime」というビデオ配信プラットフォームを持っているが、広告もコンテンツも、このプラットフォームで配信されたビデオのインプレッションはAdobeが計測している。さらにこのデータはニールセン側にも提供されるようになり、、当社のパネルに含まれていない視聴者の行動についても分析が可能となる。

またAdobeはWEBサイトのアクセス解析のツールを提供しているが、Adobeのツールを入れている各サイトについても、データの提供を受けられるようになる。これによりAdobeから提供されるデータに、当社が持つ属性データを付与して、より深いオンラインでのユーザー行動の分析に役立てることができるようになるし、その分析結果はAdobeのクライアントに対しても、フィードバックされる。Adobeとは今後、デジタルコンテンツ視聴率の開発に向けた取り組みを進めていく予定だ。

テレビ視聴のみならず、あらゆるメディア接触が断片化する時代には、他社とのアライアンスも重要だ。こうした取り組みをしつつ、2015年~2016年にかけて、ニールセンでは「デジタル視聴率にスマートテレビ、ゲーム機器経由の視聴の統合」、「全数データを活用したPCにおけるテレビ視聴の測定」「クロスプラットフォーム番組視聴率の開発」というテーマに取り組んでいく予定だ。

Nielsen 
Senior Vice President, Global Audience Measurement
Eric Solomon(エリック・ソロモン)氏


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