2014年も相次いだ不祥事。企業広報担当者は他社の広報対応を自らのことと重ねて見守ったのではないだろうか。
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2013年11月~2014年1月までに、月刊『広報会議』が150社の企業広報担当者に実施したアンケート調査によると、実際に緊急記者会見を経験したことがある企業は、全体の24%。大多数が経験している訳ではないが、全体の4分の1に上る。
また、広報のリスク管理マニュアルがあると答えた企業は68%と全体の7割。3割は、有事の際に、情報収集、情報伝達を誰が誰に対し、どのような順番で行うのか、その手続きを明文化していない。また、マニュアルをもとにした研修を実施しているのは51%と半数に留まっている。
では実際に、どのような手続きを想定しているのか。担当者の声を聞くと、その対応には社によって大きく2つの違いがある。1つ目は、「リスクの度合い」による対応方法をどのように変えるか。多かった回答は、「リスクの度合いが大きい場合には」と前置きをした上で、緊急対策委員会や危機管理委員会の発足、その後の情報伝達フローが整備されているというもの。小さい場合は、担当者や上司レベルで判断するというが、その線引きは難しい。
一方、「リスク発見者はその大小にかかわらず、『総合リスク対策委員会等』の事務局に上長を経由の上報告。事務局は関連する主管部門、委員長などに報告し、委員長が対策の指示を行う」(食料品)のように、コンプライアンス部門を窓口に、どんな小さなリスクの芽も専門部署が対応する体制をとる企業もある。
2つ目は、即座にトップまで事態が伝わる仕組みであるか。1つ目の方針にも関わるが、「リスクが発生した部門から広報・IR部へ連絡および情報提供。必要に応じて、経営トップへ報告・連絡」(小売)と担当部署で判断後、トップや役員に報告という企業が多い。他方、「各営業所よりリスク発生時に社長・役員をはじめ課長職以上へ一斉メール」(輸送用機器)のように、まずは一斉に、あるいはトップには即伝えるという企業もある。
「情報収集:総務→発信のコンセンサス:総務&IR&広報→メディア対応:広報」(化学)といった役割分担について答えてくれた企業もあるが、最後のメディア対応を想定したトレーニングは、近年実施企業が増えている。実施企業の割合は、前回45%から10pt伸ばし、55%。その受講者は、経営者66%、役員61%、広報担当者48%、広報部門長34%であり、実際の会見の参加者が対象。
緊急記者会見を実施したものの、経営トップや担当役員が参加せずに担当者や広報のみで対応したことで、「事態を甘くみている」とさらなる危機を招いた例は過去にも多数見られる。トップにその重要性を理解してもらうためにも、このようなトレーニングは有効だろう。
※この記事は2014年3月号『広報会議』に掲載されたものです。
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