【嶋浩一郎×田端信太郎×本田哲也×谷口マサト】2014年の広告業界を振り返る(前編)

谷口:あらゆるところで、垣根が決壊しているのは間違いないと思います。先日、ある建築家の人の講演を聞いていたら、傘を屋根にしたバス停を作った話をしていたんです。これって、見た人が傘を持っているふりをしてツイッターにあげると想定してのこと。建築業界の人も「バズらせる」ことを考えているって面白いなと思いました。

最近、テレビ局からドラマの脚本が送られてきて、「これをバズらせるためにはどうしたらいいでしょうか?」と相談を受けたりするんですけど、これまでずっと無視されてきたのに急に親しげだな(笑)みたいな。嬉しいんですけど。

本田:それは、統合化の第一歩ですよね。

嶋:ドラマの脚本を書く時も時限爆弾的な要素を入れておくと、後でネットで拡散するみたいなことをわかってシナリオを作る。広告でもそういう要素を入れた動画、グラフィックを作るということが増えていますよね。

田端:バズるって、遊びの余地を残しておくというか。ネットではモナリザみたいな完璧な完成品は受け入れてもらえないってことをみんなが理解し始めていますよね。

嶋 浩一郎 氏

嶋:例えば、週刊誌の記事をネットにそのまま転載しても多くのPVを獲得できるとは限らない。なぜかと言うと、週刊誌の記事は、粘着質な書き方でしょ。そこに記者の主観が入っているから。でもネットピープルは「その結論は俺に決めさせろ」と思うから、週刊誌の記事から主観要素を削ると、ネットではPVが高くなる。田端君がライブドアニュースを担当していた時代にPVの高い記事はいじられる余白があるって言ってた、いわゆる「塗り絵理論」ですよね。

田端:みんなが「塗り絵力」を、体得し始めていますよね。

嶋:「塗り絵力」に一番、敏感だったのはネットニュースを作っていた人たちだったけれど、それがテレビ番組を作る人や広告を作る人にまで広がっていますね。

本田:田端さんとはあちゅうさんと3人でトークライブをやった時にも、つっこまれる余地を戦略的に残す、「つっこまれビリティ」が大事という話になりました。

田端:テレビドラマも「半沢直樹」や「ファーストクラス」は、脚本書いている段階から、みんながつっこむことを悪乗りなくらい意識しているような。

本田:それで言うと、最近はNHKさんも会得している気がします。

次ページ 「ドラマで言うと「塗り絵力」の話とは別の観点で」へ続く

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