大学教授の話も舞い込み、会社と掛け合って受諾へ
そんな中、また思いもしないオファーをいただいた。宣伝会議の東会長より事業構想大学院大学の教授として声がかかったのである。大学時代はろくに授業にも出ず部活(体育会アメフト)とマージャンに明け暮れていた自分がまさか「先生」と呼ばれる立場になる機会が来るとは思ってもいなかった。しかしスタンフォードのビジネススクールでは予習・復習も含め真面目にほぼ全ての授業に出ており、特に実務家の教授が話す内容は理論を越えた部分が大きく、自分がそのような立場になれることを意気に感じてお受けすることにした。
本件は会社や週末を犠牲にする家族の協力もあり実現している。学ぶものも非常に多く、時には週末がまるまるつぶれることもあるが、持ち前の楽観主義で楽しく取り組ませてもらっている。授業で話す内容は本コラムを書く上で調査をしたり、考えたりしたことが役立っている。
“好きでない”を“得意”に、正のスパイラルを作る
私の現在の家庭外の人生は会社、大学院、その他活動(講演・研究会・委員会など)で構成されているが、それらはお互いに補完して強化し合っている。常に最新の業界情報を届けるために筆者は常に情報収集を続けているのだが、それが新しいマーケティング手法の実践につながったり、それを講演会や授業で披露したり、また、本記事がきっかけで設立した「次世代マーケティングプラットフォーム研究会」は既に450人の会員を有す団体となっており、他の活動ではできない自己実現と社会実験を行っている。
もともと執筆や教職とは無縁であると自分は思っていたのであるが、それはやってみると“好き”よりも“得意”が先に来ることであることが分かった。「趣味は?」と聞かれると「カラオケ」と「ゴルフ」と答えるのだが、本当は「新しいことを考えること」かもしれないと思っている。性格はマグロ、つまり泳いでいないと死んでしまうようなところがあり、新しい可能性との出会いが一番のリフレッシュになっているのである。
自分が“得意”なことは“好き”なことに比べて世の中への貢献が大きく、また仕事にしやすいと感じている。今となって考えてみればビジネススクール時代に習ったマーケティングはあまり好きではなかった。というのもケーススタディなどは仕方がないのだが、米国の事例が中心で理論はともかく実践としては日本で適用できないケースが多いと感じていたからである。
しかし、それもよく考えてみると逆にいえば日本でワークする方法が自然とわかっていたので、実践するとうまくいったのではないか。やはりいろいろ試して自分が“得意”なものを推進すると結果的にうまくいったり人にほめられたり、取り上げられるので好きになるのであろう。まさに“得意こそものの上手なれ、好きは後からついてくる”と思うのである。
この考えはデジタルマーケティングのA/Bテストに似ていると思っている。皆さんも意外な分野に自分の得意が隠れているかもしれないので、色々試してみてはいかがだろうか? 私もこのコラムを通じてそんな発見のお手伝いができればと思い、201回目からも頑張ろうと考えている。