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あの企業の業績伸長の裏には、徹底した顧客視点の発想とその実践があった。ビジネスの現場、顧客の近くに立ち続ける2人の経営者の姿に迫ります。
シリーズ:業績を伸ばし続ける企業 経営者の“超”お客様目線
サービス産業生産性協議会発表の「顧客満足度調査」2014年度コンビニ部門で全国1位に輝いたのが、北海道のセイコーマート。国内大手を抑え4年連続1位の座に君臨する秘訣とは?
セイコーマート(代表取締役社長 丸谷智保)
北海道の全179市町村のうち、170市町村に出店しているセイコーマート。人口カバー率は99.5%と、日本一のコンビニ激戦区と言われる北海道でシェアを伸ばし続ける。
過疎地や離島にも進出する積極的な出店を支えているのが、北海道の豊かな資源を活用した独自のビジネスモデルだ。
店内にあふれるプライベートブランド(PB:自主企画)の商品の多くは、道内のグループ工場で製造されたものだ。
メーカー機能を持つグループ会社は、現在11社。1年間で約1700万本を販売するパック入り牛乳類をはじめ、惣菜、サンドイッチ、麺類、アイス、スイーツなどのPBは、店頭で取り扱う全商品の実に半数以上を占める。
丸谷氏は、「我々のグループには農業生産法人や水産加工会社があり、さらに、ワインやパスタ、冷凍パン生地などは、商社を通さず海外から直輸入しています。原料から自分たちで手掛けることにより価格や量がコントロールできる上、中間マージンも削減できるんです」と、その利点について力説する。
同社では、原材料の生産、仕入から製造、物流、販売までを一貫して行うサプライ・チェーンの仕組みを構築。
その結果、500円ワインや102円の総菜などの低価格を強調したPBが充実し、看板商品として幅広く定着している。
「小売業のマーケティングを考える上でプライシングは極めて重要。それ自体が顧客ニーズに寄り添うことになるからです。我々が大切にしているのは、地域の特性を重視した商品づくりなのです」。
その好例と言えるのが、今秋リニューアルしたPBの缶コーヒーだ。業界ではカウンターコーヒーが世間の耳目を集める中、同社は88円の「キリマンジャロ」缶コーヒーを投入。順調に売上を伸ばす。
今回の戦略について丸谷氏は、「120億杯のコーヒー市場で、カウンターコーヒーのマーケットはせいぜい8億杯程度では。実際に、当社を支えているコアなお客様は圧倒的に缶コーヒーを飲んでいます。我々が取り組むべき顧客目線のマーケティングとは、消費者が何を求めているのかをトレンドで判断せずに、『As-Is(現状のまま)』で考えること。そこで、100円のカウンターコーヒーでできないものは何だろうと考えた時、豆の銘柄に特化することだったんです」。
ワイン市場も同様に、ワンコインワインを開発。1店舗で1日あたり、平均約10本を売り上げている。
「1日の売上で比較すると、恐らく同業他社の5倍以上だと思います。このように特色のある商品群を築いてこられたのは、“お客様のニーズを探り、寄り添う”という発想が根幹にあるからです。“あの会社がやっているからうちもやる”という考え方をしたならば、うちでは通りませんよ」。
業界の慣習や常識に捉われない同社の発想の最たる例が、店内調理のブランド『HOT CHEF(ホットシェフ)』だ。
スタートは1994年。現在は800以上の店舗がキッチンを構え、店内で米を炊き、カツ丼やおにぎりなどできたてのメニューを提供する。
「ホットシェフは、できたての温かいご飯が食べたいという顧客本来のニーズに近づけようとしてたどり着いたかたちです。約20年かけて、当社を象徴する存在へと成長しました」。
近年のヒット商品は、季節限定の「さんま蒲焼き重」(490円)。発売3週間で約20万食を販売し、コンビニにおける店内調理の価値を決定づけた。
「100万社のマーケティング創刊」
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