オリジナルの発想は、現場から生まれる
セイコーマートの来店客は、1日あたり約65万人。業界に先駆けて2000年に導入した会員カード「セイコーマートクラブカード」は、昨年400万人を突破した。北海道民の2人に1人以上が会員であるという計算になる。
これらの膨大なデータは本部に集約され、顧客へのDM発送や商品開発などあらゆるシーンで活用する。丸谷氏は、「POSデータやID-POSデータなどを分析することはもちろん重要ですが、そこに答えを求めるのは間違いのもと。PC上のデータだけを信じたらだめなんです。ところがマーケティングや企画の担当者の多くは、データ分析にのめり込み、そこに答えがあるかのように錯覚してしまいがちです」と懸念する。
社員数約280人のうち、マーケティングや商品企画、販促企画を担当する社員は現在50人前後。
丸谷氏は会議の場で意見を伝えるだけでなく、日頃から社員に気軽に声をかけ、部署内の歓送迎会にも出席するなど、社員一人ひと
りと対話するように心掛ける。
「社長と社員の距離が遠ければ、絶対にいいものは作れない。社長の思いが伝わっていないマーケティングなら、それは糸の切れた凧のようなもの。社員に道を示すことが社長の役割ではないでしょうか」。
新商品のアイデアや売り場づくりの参考にヨーロッパやアメリカを重点的に視察する。普段は広告や販促などの専門誌や書籍にも目を通し、マーケティングの参考にする。
「何かを見たり、味わったり、本を読んだりすることで、オリジナルの発想が生まれてくるのだと思います。マーケティングに必要なのは、アイデアを探そうとする力。アイデアは机上ではなく、店内や食卓、会話などの現場の中、お客様の近くにあるはずです」。
丸谷智保(セイコーマート 代表取締役社長)
1954年北海道中川郡池田町生まれ。79年、慶應義塾大学法学部を卒業し北海道拓殖銀行に入行。拓銀破綻後の98年にシティバンクに転じ、本部長などを務めた。2007年3月にセイコーマート入社。専務、取締役副社長を経て2009年2月より現職。
会社概要
食の宝庫・北海道を拠点に展開するコンビニチェーン。メーカー・商社機能も併せ持つユニークなビジネスモデルで本州・海外へビジネスを拡大している。お客様が求める「新鮮で低価格な食品」を届けるため、コンビニの枠を越え、原材料の生産・海外調達仕入から、製造、物流、販売まで手掛ける、サプライチェーンを構築している。
プライベートブランドや店内調理システム「ホットシェフ」など、新たな商品・サービスを、業界でいち早く導入。
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