ゼロから始めたWebサイト戦略で顧客の“安心”を醸成するー永建工業

株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、11月29日にマーケティングに特化した専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。創刊号の記事の一部を、「アドタイ」でも紹介していきます。
詳しくは、本誌をご覧ください。

あの企業の業績伸長の裏には、徹底した顧客視点の発想とその実践があった。ビジネスの現場、顧客の近くに立ち続ける2人の経営者の姿に迫ります。

シリーズ:業績を伸ばし続ける企業 経営者の“超”お客様目線

自社の一貫したブランドイメージを発信し、見込み客を育成する自社サイト。永建工業は、代表の永濱氏が旗振り役となって、サイトコンテンツを“顧客目線”のものへと改善。結果、Web経由の施工依頼が大幅に増加したという。

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永建工業(代表取締役 永濱正明)

大阪府東大阪市に本社を置く永建工業は、戸建住宅や小規模マンションの外壁塗装・屋根塗装・防水工事などを専門に行う塗装会社だ。

同社では2009年、この道32年の永濱正明社長自ら主導して、自社サイトの内容を大幅リニューアル。サイトで提供するコンテンツを“顧客目線”で刷新した結果、リニューアル前は数カ月に一度しかなかったWeb経由の施工依頼が、月に20~30件も寄せられるようになった。売上も倍近くまで伸びたという。

永建工業の強みは、戸建てなどに住む施主、つまり一般消費者に顧客対象が限定されていること。塗装事業者は大手の下請けが圧倒的多数を占めるなかで、異例とも言える業態だ。建築業界において下請業者が負うリスクは、今も昔も変わらない。

不利な取引条件や、相次ぐ大小のトラブル…それに耐えかね、現状を打破する策を探っていたところ、行き着いたのがWebサイトのニューアルだった。

転機となったのは、行政書士の知人が開催した「ホームページ集客セミナー」。

「アイデアと工夫で、これまでは“そこにあるだけ”だったホームページを顧客との重要な接点へと変えることができる。やるしかない!と挑戦心に火が付きました」と永濱さんは当時の心境を振り返る。

以来、永濱さんは2年もの歳月をかけて勉強を重ねた。「どんな業種であれ、3分以上滞在したサイトはお気に入りに登録し、自分がどこに惹き付けられたのかを徹底分析。Web制作のスクールにも通ったし、暇さえあれば関連書籍を読み漁りました」。

お客様のメリットを分かりやすい言葉で伝える

自社サイトを初めてオープンしたのは、永建工業設立7年目の2006年。しかし当時は、アクセス数が乏しいばかりでなく、サイトを見て問い合わせがあったのは「2年でたったの1件」という惨憺たる状況だったという。

他社のWebコンテンツを日々何百本も研究しながら、なぜ自社のサイトが沈黙し続けるのかを真摯に考えた末、見出したキーワードが「徹底してお客様目線に立つこと」だった。

今度こそ、という思いで臨んだリニューアルのテーマは、「お客様に安心感を与えられるサイト」。

「昔から、塗装屋といえば現場でタバコを吸ったりと、正直なところ、仕事以外の規律にはやや緩い時代もありました。しかし、今はそうはいきません。時代と共に、職人に求められるイメージも変わってきました。挨拶が明るくできて礼儀正しく、気の利いた世間話もするのが当たり前です」。

業者自らが意識を変えなければ、時代に取り残されてしまうという危機感があった。

「主語はIではなくYou(お客様)に置き換えました。自慢話は避け、お客様にどうメリット(利益)があるのか。仕事の質やサービスの何がお客様に喜んでもらえるのかを具体的に伝えます。小学生からおばあちゃんまで、誰もが理解しやすい平易な言葉遣いで、塗装の専門知識を語りかけるように書いていきました」。

永濱さんが特に情熱を燃やしたのが、「お客様の声」というページだ。永建工業に依頼した理由や、依頼前に悩んでいたこと、同社への応援メッセージなど、施主の直筆の「声」を、すばやくWebページに反映する。これまでに100人以上に依頼してきた。

「お客様の具体的なエピソードを盛り込むことは、サイトを閲覧する方に安心感を伝える上で効果的。また、ページ全体にストーリー性を持たせることで、途中で飽きて離脱されないよう工夫しています」と話す。

するとある頃から、アクセス数がじわじわと増え始め、やがて30倍、40倍と跳ね上がった。サイトを見た人から、月20~30件もの問い合わせが寄せられるようになったのである。

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