生身の消費者と向き合い、インサイトを抽出する
私はビッグデータの時代だからこそ、広告会社のマーケター、ストラテジックプランナーが、やっていたデプスインタビューのような定性調査によるインサイト発見や、仮説設定が重要になっていると思う。
確かに「全数データ」がある時代においては、200名~300名程度のアンケート調査はある意味、ナンセンスになっている。しかしビッグデータはデータの大海原であり、捨ててよいデータをどんどんリダクションしなければ本筋は見えてこない。そしてデータを捨てるためにはいくつかの仮説が必要だ。仮説なしに有効な分析結果を出すのは至難の技と言えるだろう。
そのためにもアナログなやり方であっても「生身の消費者」と向き合ってインサイトを抽出できるスキルは本当に大事である。
そして私は、伝統的な広告会社の人材の生き残る道はまさにそこにあると考えている。ビジネスロジックを理解し、豊富なフィールド調査や体験による生活感覚を持っていてこそ、成果を出すデータ分析もリードすることができる。だからこそ、広告会社のマーケター、ストラテジックプランナーは、ビッグデータ分析に向き合わないといけないのだ。
“最大公約数のシナリオ”発想から脱却が必要
一方で、文化的に従来とは違うところはある。伝統的な広告マンは習い性で、「できるだけ多くの人が少しでも反応する文脈」を考えようとする。テレビCMの時間は15秒しかないので、一つの文脈に修練させようというのが、我々が従来やってきたことだ。
ところが今は、セグメントAの人が強く反応する文脈を探る、またセグメントBの人が強く反応する文脈を設定する…というように複数のシナリオをつくることをしなければならない。
私が広告会社に入社した時、その会社で『クイズ100人にききました。』という番組をやっていた。その頃、よく思ったのは「広告マンはこのクイズで一番多い回答をすぐ連想できなければならない」ということだった。しかし、どうやら今の時代は少数回答をいくつも言い当てることまで求められていると言えるだろう。
私は講演でよく「いくらクロエ・オブライエンが天才的な分析官でも、ジャック・バウワーが指示しないと成果は出せないですよね」という比喩を話すのだが、おそらく今はジャック・バウワーがいないので成果を出すための「シナリオ設計」ができていないのだと思う。
伝統的な広告マーケティングの知見は、データドリブンマーケティングの時代だからこそ、これから活かされなければならない。
私もこれからは“アナログマーケター”をもっとチアアップしていきたいと思っている。
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