講演者
- 趙 恩淳 氏(レキットベンキーザー・ジャパン株式会社 マーケティング本部デジタルメディアマネージャー)
- 中川 香織 氏(日産自動車株式会社 グローバルマーケティングストラテジー本部デジタルストラテジー部 主担)
いかに上司を説得できるか、毎日がチャレンジ
———お二人の共通点は、グローバル企業で働いていて、かつ上司が外国の方であるという点です。日本の企業文化風土に固執しない上司が提唱するデジタルマーケティングの考え方を、日本においてどのように実践に落とし込んでいけるのか。二人が実践している取り組みを紹介していただきたいと思います。まず、お二人の簡単な自己紹介と仕事内容を教えていただけますか。
趙:レキットベンキーザーは、イギリスに本社を置き、世界60カ国に展開している消費財メーカーです。日本ではメディキュット、ミューズ、クレアラシルというブランドを展開しています。一言でいうと、非常に利益を大事にする会社なので常に徹底した効率化を目指しており、デジタルを最大限活用した効率化に注力しています。
私のミッションはデジタルを活用したマーケティング全体の最適化で、例えば、テレビ広告にデジタル広告を連携して認知効率を上げる、1ブランドで得た経験をほかの6ブランドにも展開していくなどを行っています。それぞれ国によってマーケティング情報や消費者行動が違いますので、どうやったらデジタルで日本に合った最適化ができるかを常に考えています。
中川:2004年に日産自動車に入社し、国内の販売促進部に配属され、日産のマーケティングサイトの運営や各車種のキャンペーンを行ってきました。
その後、グローバル部門に異動し、現在私の部署のミッションは、日産の中期経営計画「パワー88」に貢献するためのデジタル活用です。そのためにグローバルデジタル戦略のビジョンやガイドラインの策定など、どちらかというとひとつの国のマーケティングではなくグローバルでどのような戦略を導入していくのかいうことをメインに活動しています。
———デジタルを取り巻く環境が違う国の上司と仕事をしているなかで気づきはありますか。
中川:アメリカ人の上司はデジタルリテラシーが高く、いろいろなセミナーやセッションに参加して常に新しい情報を仕入れて導入しようとします。ただ、いち早く導入するように指示を受けても社内のさまざまな部署との調整が必要で、いつも苦労はしています。
またプロジェクトに対し、日本人はまず「できるかできないか」を考えてから取り掛かりますが、彼は常にまず、チャレンジしてみようので、その目標の高さに応えるために苦労します。
趙:デジタルの良さはスピードとリアルタイム性だと思っていますが、日本はデジタルに対する理解度が海外と異なるうえ、関係者が多いため、上司の求めているスピードになかなか追いつかず、その違いを説明するのが難しいです。アメリカではすぐに実施できることも、日本では流通小売とのパワーバランスの事情があり、その事情を理解してもらうのに時間がかかりました。上司を理解させるためのデータとロジックを用意するかという部分が私のもう一つのチャレンジでもあります。