「ブレーン」編集長 篠崎日向子
広告クリエイティブにおいて、テクノロジーはもはや欠かせないもの。この1年は特にWebの枠組みを飛び出し、イベントでの体験・体感型のデジタルインスタレーションが増加。その表現や手法は深化している。
2014年、デジタルコミュニケーションを加速させたものに、3Dプリンタ、ドローン(無人航空機)など新しいプロダクトの活用がある。
その一例がゲームの世界では既に活用されていたヘッドマウントディスプレイ。これはSNS連動型バーチャルジェットコースター「ヤフー トレンドコースター」、TSUTAYA渋谷店頭で行われた「360°ホラー」といったコンテンツで活用され、従来とは違う3D映像による体験と体感を生活者にもたらした。
新しいプロダクトには一長一短あり、それを念頭に置く必要があるが、クリエイティブとプロダクトのかけあわせによって、これまで実現できなかった、企業、ブランドの新しいコミュニケーションが確実に切り拓かれている。
動画市場も活性化を見せる。この1年でプロモーションだけではなく、ブランディングにおける動画活用が増加。中でもネスレの「コンセプトシネマ」は従来の広告とは異なる形でショートフィルムを展開し、それによりこれまでになかった新しいコミュニケーションモデルを目指すという。
CMでは伝えきれない部分をきちんと伝えていきたいと考える企業が、動画をメインに据えたコミュニケーションに踏み切っている。これまでサブの存在であった動画が主流になる、そんなことを予感させられる試みだ。
3D映像も動画も、企業、クリエイターにとって新しい表現の場。いままさにそのノウハウをきちんと蓄積、共有し、新しい映像文化を構築する時期にある。それゆえにクリエイター一人ひとりの現在の取り組みが、近い将来の映像を取り巻く環境を変えていく。そのことを意識して、新たなる制作に臨んでほしいと考えている。